常見陽平のはたらく道2022.08-09

自分のため、世のため
人のために休む勇気

2022/08/17
休むことを我慢することを美談にしていいのか。休むことの主導権を取り戻そう。

「明らかに疲れていますよ。休んでみてはどうですか?」

何度かそう言われたことがある。会社員時代、働きすぎていた頃だ。「休め」と言われ、複雑な心境になった。「そんなの、無理じゃないですか」「仕事が回りませんよ!」と猛抗議した。とはいえ、休まなくては倒れていたかもしれない。今思うとバリバリ働いていた自分に「休め」と言い渡してくれた上司、それを受け入れてくれた職場には感謝しかない。

「とりあえず南の島に行ってくれば?」と言われ、たまっていた有給休暇を活用し1週間、旅に出た。普段の業務を離れ、ゆっくりと時間が流れる中、考えごとをするのはぜいたくな時間だった。すっかりリフレッシュした。

体調を崩して休職をしたのも、美化するつもりはないが、よい経験ではあった。平日、昼に自宅にいる生活は新鮮だった。時間の流れ方がまるで違った。やはり、今後の人生を考え、変える機会となった。思い切ってベンチャー企業に転職をするとともに、執筆、講演活動に本格的に力を入れた。

中期・長期の休暇が制度化されている企業も存在する。サバティカル(大学などで校務を離れ、研究に専念する年を設ける制度)が企業にも一部、導入されつつある。以前の勤務先には、数年に一度、最大28日まで休暇をとれる制度があった。

働きすぎをどうするか、特に長時間労働の是正や、有給休暇の取得推進はわが国にとって長年の課題だった。一方、いざ休めと言われると戸惑う人、自分がいなくては、職場が回らないのではないかと不安になっている人も多いのではないか。まさに、以前の私がそうだった。

しかし、その足踏みこそが、職場をますます休みにくいものにしているということに気付いてほしい。誰が休んでも職場が回るようにしなくてはならない。自分が休むことによって、むしろ職場が強くなる。

一定の期間休むことで職場の透明性も増す。金融機関には、夏期や年末年始のほか、1週間の休暇を必ず設けるという制度がある。過去に大きな不正があったからだ。

「休めと言われても、何をしていいのかわからない」という人もいるだろう。無理もない。プレミアムフライデーの仕掛け人に取材したことがあるが、政治家などから「休んで、何をすればいいんだ?」と問い合わせがあったという。それくらい、日本人は「休む」ことを「サボっている」のだ。休みがあったら、何をするかを考えよう。

「休み方」は、気を付けなくては「休ませ方」になってしまう。政府や大企業が進める「(選択的)週休3日制」などは、まさにそうだ。副業に学び直しなどが取り組み事項として挙げられるが、これは労働力不足の解消、雇用の流動化の推進という下心を垣間見ることができる。もちろん、個人へのメリットがあることは否定しない。ただ、休むことの主導権を取り戻さなくてはならないのだ。

休むことを我慢することは美談のようで、自分自身の生き方の選択肢を放棄し、周りの人にも迷惑をかけていることを理解したい。堂々と休める社会と会社をつくろうではないか。このコラムを読んだアナタ、四の五の言わずに、いますぐ有給休暇を申請しよう。

常見 陽平 (つねみ ようへい) 千葉商科大学 准教授。働き方評論家。ProFuture株式会社 HR総研 客員研究員。ソーシャルメディアリスク研究所 客員研究員。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)、『「就活」と日本社会』(NHKブックス)、『なぜ、残業はなくならないのか』 (祥伝社)など著書多数。
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