特別編パパ料理連載100回記念
10年間を振り返って。
変わったもの変わらないもの。
連載100回と100のレシピ
この連載は、2012年10月に始まった。最初のレシピは「えのきのつくだに」。えのきだけを切って、しょうゆ、酒、みりん、砂糖と一緒に煮込むだけ。実に簡単。作り方を知らないだけで、誰もが作ることができる。私が料理好きになった原点はここだ。手品のタネ明かしと同じ。知ってしまえば、レシピ通りに作れば料理はできるのだ。
今回は、連載100回、開始から10年を記念して振り返ってみる。
100回ということは、100の料理レシピを紹介しながら、作り方のタネ明かしをしてきたことになる。毎月1つずつレシピどおり作るだけで100レパートリー増えていることになる。
料理を作る人に、悩みのアンケートをとると、上位に必ずくるのが「献立を考えることが面倒」だ。食事作りは毎日の営み。時間の確保の前に、そもそも何を作る、食べるかを考えるルーティンが大変。紹介している料理が、献立のヒントになっていればうれしい。
時代の変化とパパ料理
10年たったことで、世代が押し上がり、家庭内の家事料理事情は変わった。20代、30代など若い世代になるほど男性が日常料理をしている割合が増えている。共働き世代も3組に2組時代になっていることもあり、男女ともに家事力が必要になっている。特にコロナ禍で自宅にいる割合が増えたことで、料理を始めた人が増えた調査もあるが、作る回数が増えたこともあり、料理が楽になったということはなさそうだ。
わが家の事情を振り返ると、コロナ禍で、より私が自宅で仕事をするようになり、妻は外に働きに出ていることから、ほぼ100%私が家の料理を作るようになった。小学校1年生だった次女は、いまや高校2年生。妻の遅番、娘の塾が重なると、家族皆がそろうのが22時になることもある。まさに「家族で食卓を囲む回数は有限」だ。
食事も、各自の都合で、外で済ませることも増えた。すると、料理の献立も、できたてを味わうのではなく、温め直しておいしい、お弁当のオカズにもなるといったレパートリーが増える。皆が、夕食にそろう日は、鍋やパスタが多いかも。
家族のために、未来のために
そんな中、この10年いろいろと作り続けた結果、わかったわが家の一番人気の食事がある。それは「炊きたてごはん」だ。炊飯器から、鍋、土鍋と移り変わり、今は圧力鍋で炊く。ごはんは、白米から玄米。今は、玄米を八分づきに精米したものに、もち麦を加えて炊くごはんになった。新作料理を毎日のように作るが、炊きたてごはんが一番喜ばれることに気付いた。シンプルイズベスト。本当においしい。これに、きゅうりのぬか漬けがあれば、朝ごはんの完成だ。
私にとってこの10年は、まさに長女優梨香が1月12日に8歳8カ月で天国に旅立ってからの年月そのものだった。彼女が生まれてくれたから、思いやり料理という名のパパ料理に気付き、今がある。家族のために料理を作る父親が増えることが、未来の子どもたちのためになると信じている。だから、パパ料理を、今日も明日も思い変わらず、作って広めるのだ。