特集2022.11

中小・下請・個人請負のいま
日本経済の底上げに何が必要か
フリーランス支援を強化
連合「Wor-Qワークサポートセンター」に聞く

2022/11/15
請負問題という点において、事業規模を最小化したのが、個人請負・フリーランスの問題だ。連合は2020年10月、「連合ネットワーク会員」制度を立ち上げ、あいまいな雇用の問題への対応を強化している。フリーランス支援に取り組む連合の「Wor-Qサポートセンター」に聞いた。

フリーランスの実態調査

「立場の弱い人たちが泣き寝入りしている。このままではいけない」

連合の「Wor-Qサポートセンター」の西野ゆかり局長は危機感を強める。

連合は昨年10月、全国の20〜59歳のフリーランスを本業とする1000人から回答を得た調査結果を発表した(連合「フリーランスの実態調査2021」)。

これによると、1年間にフリーランスの仕事でトラブルを経験した人は、39.7%。報酬支払の遅延や一方的な仕事内容の変更、不当に低い報酬額が上位を占めた。また、収入が不安定、仕事がなくなったときの保障がない、不十分な社会保障といった不安の声が多かった。30代女性では出産・育児の支援制度が不十分という声が多かった。

回答者の81%が40〜50代だったが、報酬では、フリーランスとして得ている収入は、100万円未満が31%、300万円未満が全体の63%だった。「専業の人に聞いたアンケートでこの数字は率直に驚いた」と西野局長は話す。

「Wor-Qサポートセンター」

連合は雇用によらない働き方の問題に対応するため、2020年10月、「連合ネットワーク会員」制度を立ち上げた。フリーランスやあいまいな雇用で働く人を対象にした無料の会員制度だ。同時に、フリーランス向けのウェブサイト「Wor-Q(ワーク)」をオープン。労働相談のデータベースを閲覧できたり、福利厚生のクーポンなどを利用できたりする。「連合ネットワーク会員」に登録すると、サイトの機能をすべて利用できる。

さらに、フリーランスが団体扱いで入れる「Wor-Q共済」をこくみん共済coopと連携して2021年10月にスタートした。年会費3000円で基本共済の保障を受けられるほか、任意加入のオプションでは、業務上の事故に備えた賠償保障や、病気やけがで働けなくなった時の所得補償制度も用意されている。

連合はフリーランス問題への対応を強化するため、2021年10月に「Wor-Qサポートセンター」を開設した。

サポートセンターでは今年4月、フリーランスの直面する実態や課題を解決する糸口を考える場として、「みんなでつながる!フリーランス月間」を実施した。契約問題にスポットを当て、アイデアを出し合うイベントを開催したり、弁護士による労働相談を実施したりした。

実態を知らせる

西野局長はこの間、フリーランスの現実を目の当たりにしてきた。

「時給換算200円で働いているアニメーターや、働いているのに研修費を支払わされるインストラクター。ママ友ができて、産休・育休という言葉を初めて知ったフリーランス、車内に荷物がいっぱいになり危険な状態で配送している配達員、パワハラ、セクハラなどなど、厳しい実態をたくさん聞いてきた」

「文化や芸術、芸能のように人の心を豊かにしてくれるはずの世界で、大変なことが起きている。この現実を多くの人に知らせていきたい」

連合は今年9月の中央執行委員会で「Wor-Qアドバイザリーボード」の設置を確認した。フリーランスの課題解決に向けて、多方面から意見を聞く場として生かすこととしている。中でも、文化・芸能・芸術分野にスポットを当て、契約書問題などでの政策提言をめざす。来年には、フリーランスサミットの全国展開での開催を予定している。

西野局長は、「フリーランスの問題は雇用労働者にとって人ごとではない。問題は働く人の身近に迫っている。多くの人に問題に気付いてもらうように取り組みたい」と訴える。サポートセンターの立ち上げから、この取り組みに汗をかいてきた同センターの越智陽介さんも、「フリーランスへの取り組みは、連合運動の大きな柱の一つとなるもの」と強調する。立場の弱い就労者の増加は、社会全体の労働条件を引き下げる。社会の底割れを防ぐためにも、フリーランスの課題に取り組むことが重要だ。

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