「流山がすごい」
社会を変えるのは誰なのか?
『流山がすごい』(大西康之 新潮社)という本が話題となっている。2022年12月の発売以来1カ月で2回重版がかかった。紀伊國屋書店流山おおたかの森店では、発売後1カ月で1000冊が売れたという。
売れ行きもすごいが、中身もすごい。本書は6年連続人口増加率全国トップとなった流山市について、同市在住の気鋭の経済ジャーナリストがその魅力と秘密に迫ったものである。東京のベッドタウンの一つだった流山市が、なぜここまで支持されているのか。「母になるなら、流山市。」のキャッチコピーが、響いた。「子育て中の共働き世代」に的を絞った政策を展開した。例えば同市には、駅に子供を連れていけば、保育園に送迎するサービスがある。きょうだいで違う保育園に通っていても、保護者に送迎の負荷がかからない。
「子育て中の共働き世代」向けの政策だけでなく、人材活用、産業振興、都市計画、環境保全など数々の政策、取り組みが功を奏している。以前は「千葉のチベット」と呼ばれていたそうだが、今は「千葉のニコタマ」と呼ばれるほど栄えている。
流山市は自治体の生き残り方の成功事例とされている。ただ、単に市長が頑張ったという話ではない。成長・変革マインドを持った若い夫婦を引き寄せる力がこの街にはある。さらに、市民が当事者意識を発揮し何かを始める風土がここにはある。NPO、サッカーチーム、特色のある菓子店など、立ち上がった市民の例が紹介されている。現市長も、流山市への問題意識から一市民として立ち上がり、2度目の出馬で当選し、現在5期目を迎えている。
統一地方選がやってくる。一部の選挙区では国会議員の補選も行われる。この国の、この街のあるべき姿とはなんだろう。いま、街では何が問題となっているだろうか。これを機会に、考えたい。住民にとって大事な問題とは何か。先日、札幌在住の母親に電話をしたが、「札幌五輪よりも除雪の徹底を!」という切実な声を聞いた。庶民の声のようで、大切な論点だ。首長であれ、地方議員であれ、統一地方選挙の候補者は、街の現実を直視してほしい。
もっとも、選挙に関して、諦念にも似た感情が渦巻いている人もいるのではないか。特に、地方の選挙においては、無投票当選が実現してしまう、首長が何年も交代していないような自治体も存在する。しかも、中高年の男性だらけということもある。とはいえ、絶望してばかりではいられない。少なくとも、どのような人に政治家になってもらいたいか、どのような政策を実現してもらいたいか。ビジョンを固めたい。
あなたの一票はきっと社会を変える。そう信じて、投票に行こう。
ただ、社会を変える手段は政治だけではない。社会の変え方の選択肢は増えている。まさに流山市などはそうだ。街の問題や、あるべき姿を市民が発信しているのが素晴らしい。そして、自らの仕事は、きっと社会を変えると信じたい。
たまに、政治家にならないかというお声がけを頂く。大変光栄だが、言論と教育の力で社会を少しでも良い方向に動かしたいというのが、私のいまの想いだ。