巻頭言 UNITE2023.07

第211通常国会の閉会

2023/07/12
6月21日、第211通常国会が閉会した。会期末が迫る中、岸田首相は解散権をちらつかせ、野党をけん制したが、結局先送りした。

今国会は、論戦の内実は乏しく、多くの課題が生煮えのまま、政府提出法案60本中58本が成立した。物価高騰などの経済対策はもとより、防衛や少子高齢化、人権などの極めて重要な政策が扱われたにもかかわらず、十分な国会論戦により、賛否が分かれる重要なテーマで、より幅広い合意形成を探る努力は見られなかった。これまでにも増して、現政権与党の国会軽視した運営であり、主権者である国民に対する不誠実な態度といえる。

最大の争点になったのが、防衛費増額と専守防衛のあり方であった。岸田首相は、昨年末に国民的議論のないまま、安保3文書を改定し、専守防衛の抜本的転換となる「敵基地攻撃能力」の保有や今後5年間で防衛費を従来の1.5倍以上となる43兆円にも積み増す内容を打ち出していた。安保政策の大転換にあたり、是非を含めて今国会での十分な論戦は当然のはずだった。初年度となる2023年度予算審議では、防衛費を敵基地攻撃能力関連経費などで破格の1.4兆円も大幅に増やしたにもかかわらず、その重みとは裏腹に、政府は、防衛上の秘密を盾に野党からの疑問に正面から答えず、国民に伏せたままである。最重要法案と位置付けた防衛費増額のための財源確保法案においても同様であり、野党からの指摘に曖昧な説明を繰り返し、具体論も先送りし、政権与党は強引に成立させた。

新増設や運転期間の延長などの「GX脱炭素電源法」も国会での十分な議論がないまま成立した。国民の反対や不安を置き去りにして根幹的政策が次々と転換される状況に強い危機感を抱く。

総選挙へ向けて

「異次元」とうたった子ども・子育て政策についても、具体的な内容は論議されず財源も後回しとなった。

最終盤で扱った改正出入国管理法とLGBT理解増進法では、人の命や人権にかかわる重要な内容であるにもかかわらず、多くの問題を抱えたまま強行採決により成立した。しかも、日本維新の会と国民民主党は賛成に回った。

立憲民主党等が提出した「内閣不信任決議案」にも、与党だけでなく、日本維新の会と国民民主党は反対した。これだけの国会運営を行った政府与党に対して、賛成する野党には、残念である。

今国会では、極めて問題の多い内容の法案が、短時間で十分な論議もなく、数の力で成立した。政府提出法案の問題点を放置したままで成立させることが国会の仕事と与党が考えるなら、国権の最高機関、唯一の立法機関の役割が機能せず、国会と政府との緊張関係は失われ、国会の形骸化を招く。

こうした国会となった要因は、野党の責任も大きい。野党の弱体に加え、分裂した対応では、政権与党に緊張を与えることはできない。基本政策等の違いから、共闘が難しいのは理解できなくもないが、今国会でも明らかなように、野党がバラバラでは、政府与党の思いどおりに偏った政策がなされるばかりである。今国会を見ても、日本の針路を大転換するような重要な内容が極めて軽く扱われ、そのつけは、最終的には国民に回ってくる。大同小異、野党の結集を求めたい。

情報労連は、来たるべき解散総選挙に向けて、組合員に政治の重要性を訴えていきたい。

安藤 京一 (あんどう きょういち) 情報労連 中央執行委員長
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