常見陽平のはたらく道2024.01-02

「苦手な人」との付き合い方を変え
人生をよい方向へ動かす

2024/01/17
誰にでも「苦手な人」はいるものだ。職場ではそういう人とも付き合わなければいけない。付き合い方を見直し、1年を気持ちよく過ごそう。

「常見さんは、ネットでたたかれることも多いのに、どうして平気でいられるんですか?」年末、忘年会で久々に会った友人・知人からこんな質問を頂いた。「そうだったのか、俺、嫌われているんだ」と実感した。相当、鈍感なのだろう。ネットで飛んでくる誹謗中傷、罵詈雑言の類はスルーすることにしている。一方、建設的な批判を無視していなかったか、少しだけ不安になった。さらには、自分自身が誰かにとっての「苦手な人」になっていないかとも。

「悪い人なんか、いない」という言葉を聞くと、少しだけ優しい気持ちになれる。ただ、実際に世の中には悪い人はいるのは明らかだ。もちろん、その人がなぜ悪い人になってしまったのか、社会や会社が悪かったのではないかという視点は重要だ。例えば、渦中の問題に関していうと「政治とカネ」に関して法に触れる悪事は問題だが、一方で「なぜ、政治にはカネがかかるのか?」「悪事に走らずに政治家が政治活動に必要なカネに困らないようにするにはどうすればいいか」という問題は考えなくてはならない。

実際、働く人は「悪い人」ではなく「苦手な人」に悩んでいるのではないか。この「苦手な人」という存在は、「悪い人」よりも面倒くさい。というのも「苦手な人」には、その人なりの合理性が存在することがあるからだ。山崎豊子や池井戸潤の経済小説を映画化・ドラマ化した作品をサブスクで観ている。これらの作品には、一見すると悪役だが、合理性を貫き通す人物が登場する。出世や名声のためには手段を選ばない医師、企業の存続・繁栄のためにスレスレの手段を使う経営者がこれらの作品には登場する。法に触れる問題と、嫌悪感を催す言動、共感できない行動は明確に異なる。「苦手な人」は彼ら彼女たちなりに合理的に生きている。

そうであるがゆえに、相手にとっては自分自身が「苦手な人」になっている可能性も認識しておきたい。自身の言動が相手に対して不愉快なものになっていないか、検証は必要だ。ただ、これをやり過ぎると自己嫌悪、さらには人間不信になることもある。

もっとも「苦手な人」との接し方は難しいことではない。相手が何を大切にしているか、どうすれば互いに迷惑にならないかを考えてみよう。これは別に「苦手な人」に限った話ではない。家族、友人、恋人なども含めて相手の価値観を理解すること、これが円満な人間関係の秘訣である。

「苦手な人」と接する苦しみを自分だけで背負ってはいけない。自分にとって「苦手な人」でも、その人と接するのが苦ではないという人が周りに一人や二人はいるはずだ。その人を巻き込み、接する。さらには、周りにとって明らかに迷惑な言動がある場合は、その人を通じて注意してもらう。

これもまた「苦手な人」に限らない話だが、相手の「よい点」「好きになれる点」を探すのもポイントだ。一つくらいはあるはずだ。中堅私大の教員となりもうすぐ10年だが、私は勉強が苦手な学生、一見すると素行に問題がある学生でも、この点にこだわったことで、学生との接し方が変わった。

2024年が始まった。「苦手な人」に対する見方、接し方を変えるだけで人生はきっとよい方向に向かう。世界の見え方すら変わってしまうかもしれない。ぜひ、取り組んでみよう。

常見 陽平 (つねみ ようへい) 千葉商科大学 准教授。働き方評論家。ProFuture株式会社 HR総研 客員研究員。ソーシャルメディアリスク研究所 客員研究員。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)、『「就活」と日本社会』(NHKブックス)、『なぜ、残業はなくならないのか』 (祥伝社)など著書多数。
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