災害と雇用・労働・ICT
働く人への影響を考える通信インフラの
復旧を担う仲間たち
作業環境整備も重要な課題
すぐさま復旧作業に入る
1月1日に能登半島を襲った最大震度7の地震により、地域の通信インフラは甚大な被害を受けた。その復旧のために、情報労連の多くの仲間が、被災地で復旧作業に従事している。北陸地方の通信建設企業で構成される北陸地方情報通信設備建設労働組合(通建連合北陸:組合員数約600人)の仲間たちは、地元企業として震災直後から対応してきた。
「地震のすぐあとに従業員の安否確認と、出勤できるかどうかの確認が行われました」
こう振り返るのは、通建連合北陸の狩山雅弥委員長。通建連合北陸の中には、能登半島在住の組合員もおり、自宅が全壊した組合員や自衛隊に輸送してもらい二次避難先へ移動した組合員もいる。
復旧作業は、地震発生翌日の1月2日からすぐに始まった。まずは、通信インフラの被害状況の確認や緊急車両を通すための道路の啓開作業、そして停電エリアでの基地局への電力供給用などがメインだ。北陸の通信建設企業では、100人体制で復旧作業に当たった。
「地震による道路の陥没や土砂崩れによる道路の寸断などにより、作業は難航しました」と狩山委員長は話す。倒れた電柱などを撤去する道路の啓開作業だけでも1月末まで時間を要した。
断水の影響大きく
水道などの生活インフラの復旧に時間がかかったことも作業の難しさに拍車をかけた。通建連合北陸の組合員は、NTT七尾ビルを拠点に活動し、その近隣で寝泊まりをしながら復旧作業に当たった。そこでの課題は、断水が長く続いたことによる生活環境の厳しさだった。
「活動拠点となる局舎には仮設トイレがあっても、いったん現場に出ると使用できるトイレがないことに直面しました。避難所などのトイレは住民の方を優先するため、作業員たちは現場に簡易トイレを持参して復旧に当たりましたが、作業中にトイレに行かないで済むように食事を控える人もいました。作業から戻ってきてもお風呂に入ったり、洗濯したりすることができない環境が続きました」
全国から応援に駆け付けた部隊は、能登半島の各地にあるNTTの局舎に寝泊まりしながら復旧作業に当たったが、同様の課題に直面した。局舎内の寒さは、睡眠にも影響した。
こうした課題に対し、通建連合本部は、簡易的に組み立てをできるシャワーセット・10セットを届けるなどの支援活動を展開。また地元では水道が開通している近隣地域から水を届ける支援なども行われてきた。
その上で、通建連合は、1月30日にあった情報労連の中央委員会で、インフラ復旧従事者が安心して作業できる「作業」環境の整備に向けた政治対応を情報労連中央本部に要請した。通建連合の髙代事務局長は、「復旧作業を早く進めるためにも、作業する人たちの環境に政治は目を向けてほしい」と訴える。
作業する人の環境
復旧作業に従事する組合員の仲間は、使命感を持って働いているが、一方で労働時間の課題もある。労働基準法33条は、災害復旧時の時間外労働の例外を規定している。生活環境に加え、長時間労働で体を壊さないようにするための配慮も重要だ。狩山委員長は、「こういう時だからこそ、体調管理をはじめ現場の状況をきちんと把握することが大切だと思います。生活環境の改善を含めて会社に求めていきたい」と話す。
復旧作業は今後、応急的な復旧作業から本格的な復旧作業へと移行していく。
通信インフラの復旧は、災害からの復旧・復興になくてはならない。だからこそ、その作業をする人たちの環境にも目を向けた対応が求められるといえよう。