渋谷龍一のドラゴンノート2017.05

【第1編】母親になる前に ~女性の「ライフコース」がみえていますか~離婚は「想定内」?

2017/05/17

「夫婦3組に1組が離婚」などの報道が目立ちますが、離婚に関するデータは慎重に理解する必要があります。日本の離婚率は、ある年に離婚した夫婦をその年に結婚した夫婦で割って計算されます。離婚するのは、もっと前から結婚していた夫婦全体の中からなので候補者が多い。ある年に結婚した夫婦は夫婦全体に比べて少ない。この割り算による離婚率は高くなりがちです。

厚労省の調査によると、2016年の人口1000人あたりの離婚件数による離婚率は1.73で、近年は上下していますがほぼ不変です。結婚そのものが減っているため離婚も抑制されますが、それでも約21万7000組の夫婦が離婚しています。

離婚者にとって離婚は1回とか2回とかの回数になりますから、離婚率にほとんど意味はありません。実はこの回数もあまり関係ありません。現実には、本当に離婚するか、それとも離婚しないで我慢するかの生活になるからです。離婚を考えたことがある、という人の割合を身近でとってみてください。ほぼ100%のはずです。そうならば、あなたも離婚を考えることになる、と見るべきです。しかし同時に、離婚したくても離婚できない場合を考えてほしいのです。

離婚を踏みとどまる理由はいろいろありますが、子どものためによくない、いまの生活を捨てたくない、いつかうまくいくかもしれない、などが多いのです。子どものために離婚できないというのは美談のようですが、母親が「こんな夫と暮らすのは子どものためによくない」と判断して離婚することは十分にありえるのではないか、と考えられるかどうかです。

離婚率を取り上げてあいまいに済ますのではなく、多くの人がどうして離婚するのかに焦点を合わせましょう。ところが、離婚から目を背けようとする風潮が強いのでしっかりと考える機会を奪われています。これが日本人の弱点で、とりわけシングルマザーたちを苦しめています。

渋谷 龍一 (しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。
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