トピックス2017.06

労働組合の力で労働安全衛生の確立へ
「仲間づくり」との連携を強める

2017/06/14
情報労連は労働安全衛生活動を、「組合員・社員等の安全と命を守る労働組合活動の根幹となる重要な取り組み」として活動している。「防げるはずの事故は防ぐ」ため、さまざまな活動を展開していく。
松岡 康司 情報労連中央執行委員

人身事故に対する取り組み

情報労連は、「労働安全衛生活動は、組合員・社員等の安全と命を守る労働組合活動の根幹となる重要な取り組み」との認識の下、構成組織と連携し、(1)「労働安全衛生強化月間」の設定(2)人身事故防止(3)心身の健康確保─の取り組みを組織全体で展開してきた。

とりわけ、情報労連の中心的な業種である情報通信に関連する通信建設業は、一般の建設業と同様に高所などで作業する機会も多数あり、これまで当該組織の通建連合はもとより、情報労連としても「防げるはずの事故は防ぐ」ことを強く意識し、発生した人身事故の情報共有や意識啓発に取り組んできたところである。

人身事故の状況

厚生労働省が発表した国内における建設業の人身事故(死亡災害および休業4日以上の死傷災害)の状況は、2015年(1~12月)において1万5584人、全産業の13.4%となっているが、死亡者数だけでみれば、全産業の1/3を占め、ワーストワンの産業となっている。

また、建設業における型別死亡災害状況は、墜落・転落が4割を占めるとともに、全産業の墜落・転落で死亡した労働者の半数が建設業になっている。つまり建設業の人身事故は「いったん人身事故が発生すると重傷化するリスクが高い」特徴がある。

情報労連内でも、2016年度(4月末時点)の転落事故件数は9件、年間でもおおよそ毎年十数件程度発生し、そのうち2~3件が死亡に至る事故となっており、一般の建設業と同様の特徴が見られる。またその多くは、高所作業において作業者の安全を確保するためのロープに被災者がつながっていないなどの「無ロープ状態」になっており、安全ルールの遵守、基本動作の徹底がなされていないことが主な要因となっている。

発注、受注を超えた労使の連携

情報労連は、発生した事故を教訓とし、同様の事故を繰り返さない「防げるはずの事故は防ぐ」取り組みとして、人身事故の発生や再発防止策等の情報共有と「労働安全衛生強化月間」における安全衛生委員会の充実や意識啓発に取り組んできたが、人身事故の発生は大きく減少したとは言い難く、また基本動作の不徹底による事故が繰り返し発生している状況にある。

情報労連は、引き続き、人身事故等の情報の発信、意識啓発の取り組みを行っていくが、人身事故をなくしていくためには、当該組織において、事故に対する直接的な対策だけでなく、その対策を現場でどのようにして確実に実施していくかなど、職場実態を踏まえた一歩踏み込んだ取り組みが必要と認識する。

特に、通信建設業において一歩踏み込んだ取り組みを実践していくためには、受注会社の労使だけではなく、現場に対置する当該組織がしっかり安全対策に取り組める環境を整える観点からも、発注会社労使の役割発揮が重要である。

情報労連においては、発注・受注会社労使間で安全について意見交換できる場が設定されており、現場の声も踏まえつつ、なぜ基本動作がなされなかったのか、基本動作を守るためにどうすればよいのか、人身事故が起こった場合でも被害を最小限にするにはどうすればよいのかなど、一歩踏み込んだ取り組みに向けた建設的な論議を充実させていく考えである。将来的には通信建設業界全体の安全について労使で論議できる場にも発展させていきたい。

2次以降の協力会社における仲間づくりの促進

一般的に、発注会社の業務を受託した元請会社から業務等を受託した会社を1次協力会社、そこからさらに業務等を受注した会社を2次協力会社というように、通信建設業は一般の建設業と同様、多重構造となっており、とりわけ2次以降の協力会社の多くは「労働組合がない」いわゆる未組織会社も少なくない。2016年度(4月末時点)に発生した人身事故47件のうち2次以降の協力会社社員が被災したケースは、判明しているだけで16件となっているが、未組織会社に労働組合としてかかわることには限界がある。

未組織会社に労働組合ができることで、(1)働く側の労働安全衛生確立の取り組み意識の醸成(2)労使共通認識での安全の各種取り組みの展開─が期待され、情報労連としての安全の取り組み強化に向けた支援が可能となる。情報労連は未組織会社における労働安全衛生の確立のためにも、関連組織との連携を密に、仲間づくり(組織化)との連携を強めていく。

通信建設業界の発展に向けて

2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催等もあり、建設関連職種の雇用情勢が着実に改善する中、有効求人倍率の上昇、企業の人手不足感の高まりなど建設業は、人手不足の状況にある。加えて、建設労働者の3人に1人が65歳以上となっているなど高齢化が進展し、新規学卒入職者が減少するなど、将来を担う技能労働者の不足が懸念されている。程度の差はあるものの、通信建設業においても同様の課題があることは言うまでもない。

情報労連は2年に1度、定期全国大会において、雇用、社会保障、情報通信・情報サービスなどの諸課題に対する情報労連の政策をまとめた「基本スタンス」を決定してきたが、今回初めて通信建設業に焦点をあてた政策を提起した。

政策の内容については、前述の課題や通信建設業の事業動向を踏まえ、(1)通信建設業界の健全な発展と魅力向上に向け、安心・安全の現場づくりを追求する(2)将来にわたる事業基盤の確立に向け、人材育成・確保と建設工事のICT化を推進する─を基本的な考え方とした上で、(1)転落防止などの安全労働の推進(2)長時間労働の縮減(3)人材確保・育成支援(4)建設工事等へのICT導入支援─などを個別政策とした。

おわりに

通信建設工事における人身事故、特に死亡など重大人身事故をゼロにしていくためには、発注会社、受注会社の労使が会社の枠を超え、さらに一体となった取り組みが必要不可欠であり、受発注会社ともに対置する情報労連の果たすべき役割は大きい。引き続き、構成組織と連携を密に、現場の組合員一人ひとりの声を丁寧に聞き、労働安全衛生の取り組みを強化する。

情報労連が作成した「安全衛生委員会設置&活性化ハンドブックIII」
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