【第2編】働く~もう「非正規社会」だって わかっていますか~正社員が非正規を苦しめる
2008年のリーマン・ショック後に、「派遣切り」に直面してお金も住む場所もなくなった派遣労働者のために日比谷公園に「年越し派遣村」が設営されました。また、派遣労働者が殺傷事件を起こしたりして、働き方や生き方に注目が集まり、非正規問題が社会問題になったと言われています。
もう社会問題になっているはずなのに、「非」正規という言葉そのものや、非正規なんか、非正規しか、とか言い方はひどいものです。また、本人がだらしないから、努力が足りないから非正規になったので本人の責任だ、という自己責任論がまだ強力に付着しています。
最近、市役所の非正規職員に取材する機会がありました。公務こそ最も非正規化が進行している職場の一つなのです。話を聴くうちに、非正規職員の心が持たない状況があらわになりました。「賞与日は非正規のみんなが欠勤する。正職員が喜んでいるから」「クレーマーの住民から訴えられた時のために自己負担で民事訴訟保険に入れと言われた」。これらがどれほど非正規職員の心を傷つけているかわかりますか。
賞与日に欠勤するのは大人げないとか、賞与がない人はそんな働きしかしないから、と思い込んでいませんか。実は正規職員以上に高度な仕事をしていて、いないと職場が回らなくて困るという人たちです。「今日はボーナス支給日!さあ家族と楽しい夜を過ごそう」との一斉メールが届いた時の気持ちがわかりますか。
そんなに危険なら保険は当然入るべきだと思っていませんか。正規職員と同じくサービス窓口に立ち、3分の1の給料で働く人が自費で保険に入らなければ危険と言われた時の気持ちがわかりますか。
公務だけの話ではなく、正社員は非正規で懸命に働いて真面目に生きている人のことを想像できない。自分で経験しないことはよく考えようとしない。無神経で勝手に想像するくせに、想像力が非常に低く的外れだから、非正規の人たちをもっと苦しめているのです。
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。