渋谷龍一のドラゴンノート2018.05

【第2編】働く〜もう「非正規社会」だって わかっていますか〜女性と非正規と「働き方改革」は深い関係

2018/05/16

正規、非正規って言いますが、その男女での違いはとても大きいのです。統計ごとに若干違うのですが、男性の2割くらいの少数が非正規なのに対して、女性の6割以上が非正規です。

控えめに見ても非正規の約7割を女性が占めています。ということは、ほとんどの場合、非正規問題とは女性問題になるはずです。この単純な事実を見過ごすからフィクションに巻き込まれるのです。

結婚して正社員であり続ける女性が少ないのは、女性のライフコースで説明した通りです。なぜ女性だと非正規が多いのか。逆に考えれば、どうして男性は正社員が多いのでしょうか。家庭を見ればすぐ答えが見つかります。男性は家庭を出て仕事に専念し(ケアする女性がいるから長時間労働が可能)、女性は家庭にいて家事や育児を担う(男性を会社へ送り出すためのケアがあるから短時間労働しかできない)。原則からすれば、家庭にいなくて働く女性は例外です。例外のような働き方、それこそが労働時間が短く賃金が低い非正規なのです。

ここで「働き方改革」の柱は長時間労働の是正と同一労働同一賃金の実現の二つであることの意味が見えてきます。裁量労働制などで残業代が消えたら男性正社員は、短時間労働へ向かうわけはありません。万が一、同一労働同一賃金が実現しても、女性が会社へ向かうわけもありません。ですから同一労働同一賃金は、最初から無理だと言われながら、ここまでの差別賃金なら合法だという確認作業のようになっています。「働き方改革」を男女の視点からみると、これまで強固だった男女の基本関係をほぐすどころか、もっと頑丈にする予定のものです。

既婚女性でも正社員として働き続け、管理職になったり、役員になったりする人がいます。一部の女性は男性より高い給料を得て、役員どころか社長もいます。しかし、そんな「女性活躍」の武勇伝は後回しにしませんか。大多数の男女関係のリアルな土台壊しの方が先でしょう。

渋谷 龍一 (しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。
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