渋谷龍一のドラゴンノート2018.08-09

【第2編】働く〜もう「非正規社会」だって わかっていますか〜女性労組役員のいら立ち

2018/08/10

労働組合の女性役員たちは、ほぼ全員がいら立っています。いら立っていないのは、「男尊女子」(酒井順子さんによる表現)だけです。

「日本のキホン」が労組にも持ち込まれているからです。正規にせよ非正規にせよ、労働者の味方であるはずの労組に、企業や家庭と同じにおいが充満しているのです。女性には組合運動は無理だ、と公然と表明する男性役員をたくさん知っています。賃上げ交渉の時期になると24時間体制となり、家にも帰らず集中します。女性がやるのは無理というわけです。男性役員ががんばり、労働条件が上がった、就労環境がよくなった、などの成果を上げる。その妻は専業主婦であれ、主婦パートであれ、正社員であれ夫をケアしているからこその業績です。

女性役員は男性役員の努力を認めていないわけではありません。男女関係の下敷きを認めようとせず、そんなものはないことにして、自らの能力や努力の結果だと本気で信じているから、「そこまでアホなのか」といら立っているのです。

「そんなの当然じゃないか」とみじんも疑わない男性役員は、バリバリ働く男性正社員の問題を解決するのは上手でしょうが、身近な女性役員がいら立っているのを想像できない。それが震源である女性問題≒非正規問題の解決は絶望的であるとは思いもしないのです。

企業で女性管理職や役員の比率を上げさえすればという「女性活躍」と、「うちの労組は女性役員が活躍しています」「なんと非正規女性の役員もいます」という「女性活躍」は同じでよいのでしょうか。いくら非正規を組合員にしていても、内情は正社員組合のままではないでしょうか。

組合員の家庭内の役割分業にも、組合員の子どもたちの教育にも、ズケズケと踏み込んで口を出して働き掛け、「これから労働法や最低賃金以外の方法で労組が非正規問題を解決してみせます」「まずはボクからやってみます」とヌケヌケと宣言できる男性役員が出現しない限り、女性役員のいら立ちはなくならないでしょう。

渋谷 龍一 (しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
『女性活躍「不可能」社会ニッポン原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)で2016年貧困ジャーナリズム賞を受賞。
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