トピックス2018.11

9月28日に札幌地裁で不当判決「ベルコ」裁判
現場の実態を見ない不当判決
業務委託契約の濫用を許すな

2018/11/13
全ベルコ労働組合の仲間が闘う裁判の地裁判決が9月28日に言い渡された。原告の請求がすべて棄却される不当判決だった。判決の問題点について弁護団の棗一郎弁護士に聞いた。
棗 一郎 弁護士
全ベルコ労働組合裁判闘争弁護団
日本労働弁護団幹事長

これまでの経過

冠婚葬祭大手ベルコの代理店で、情報労連加盟の全ベルコ労働組合の組合員2人が実質解雇され、地位確認などを求めてベルコ本社を相手に提訴した裁判の判決が9月28日、札幌地裁であった。

裁判では、業務委託契約を濫用し、使用者の責任を免れるベルコのビジネスモデルが問われた。ベルコは実質的に全国で約7000人の従業員を擁している企業であるにもかかわらず(2017年3月現在、経産省への報告)、労働契約を直接締結した正社員はわずか35人。それ以外の従業員については、労働契約を締結せず、業務委託契約を多用したビジネスモデルを展開している。

札幌地裁は判決で、原告とベルコの労働契約を認めず、原告の請求をすべて棄却した。原告は10月10日、札幌高裁に控訴した。

情報労連は全ベルコ労働組合の2015年9月の情報労連加盟以降、連合本部・連合北海道と連携して、裁判や労働委員会での闘いを支援してきた。本誌でもベルコの業務委託契約を濫用したビジネスモデルについて繰り返し報告してきた。2018年4月号(冠婚葬祭大手「ベルコ」で濫用される「個別請負」「請負契約」を乱用した働かせ方を許すな)2016年4月号(全ベルコ労働組合の戦い 業務委託契約の乱用に対して労働組合や代理店主が「使用者性・労働者性」を訴え提訴)業務委託契約を濫用したベルコのビジネスモデルが認められれば、雇用責任を負わない脱法的な働かせ方がまん延し、労働法規の保護が及ばない労働者が大量に生まれる懸念が強い。判決の問題点について原告側代理人の棗一郎弁護士に聞いた。

「実態」を見なかった判決

ベルコには全国で32の支社がありますが、その支社長はすべて業務委託契約です。また、ベルコには全国に350を超える支部(代理店)がありますが、その支部長(代理店長)もすべてベルコとの業務委託契約です。一般の従業員は、これらの支部長(代理店長)の下に雇用されています。

しかし、現場の実態を見ると、本部から支社長、支部長(代理店長)、従業員に至るまで、一貫してベルコの指揮命令があることがわかります。にもかかわらずベルコは、業務委託契約という形式を用いることで、従業員とは雇用関係にないと主張し続けてきました。これほど大掛かりに業務委託契約を濫用した事件は日本の労働裁判史上初めてのことです。

裁判で私たちは、契約の形式を見るのではなく、就労や指揮命令の実態を見るように訴えてきました。しかし、裁判所は業務委託契約の形式を重視した判決を下しました。一言で言えば、実態を見ませんでした。

「商業使用人」概念の活用

業務委託契約を濫用して雇用責任を免れる類似の事件は少なくありません。ただ、ベルコ事件の特徴は、支部長(代理店長)に雇用責任を負わせ、本部が責任を免れる手法を大規模かつ組織的に採用したことにあります。

こうした業務委託契約の濫用を突破するための法理論として従来用いられてきたのは「法人格の濫用」と「黙示の労働契約の成立」という手法でした。しかし、これらの手法で今回の業務委託契約の形式論を突破するのは、これまでの判例などからハードルが高いことがわかっていました。そこで弁護団は今回、この種の労働裁判では初めて、会社法上の商業使用人という概念を用いました。

会社法上の商業使用人とは、取引の安全性を確保するため用いられる概念です。典型的な例は会社の支社長や店長、営業部長です。実際の企業経営では、経営陣が支社や支店の契約まですべて行うことはできません。そのため、会社法では商業使用人という概念を使って、その人たちは会社の営業を行う包括的な代理権を持っているとみなします。それにより商業使用人が会社の指示に従って行う、契約や金銭の授受などの効果はすべて、会社に帰属するとみなされるようになります。企業と契約する際、取引先の人に会社を代表しているかいちいち確認することはしません。そのような手間を省くための概念です。

仮に支部長(代理店長)が商業使用人に当たるとなれば、商業使用人が締結した労働契約の効果はベルコに帰属することになり、ベルコと原告との労働契約が成立することになります。理論的には筋が通っています。

問題は、支部長(代理店長)が商業使用人に当たるかどうかです。商業使用人は、商法学説の典型的な説では雇用契約とされていますが、必ずしも雇用契約に縛られているわけではありません。最高裁判例の判断枠組みでは、「当該使用人が営業主からその営業に関するある種類又は特定の事項の処理を委任された者であること及び当該行為が客観的にみて右事項の範囲内に属することを主張・立証しなければならない」としています。この判断枠組みによれば、原告を雇用していた支部長(代理店長)が営業や契約などの事項を任された者であると客観的に立証すればよい、ということになります。実態を見れば、支部長(代理店長)がベルコのさまざまな業務を任されていたのは明らかです。

事実認定に問題

しかし、判決は、商業使用人に当たるかどうかは「被告に使用されて労務を提供しているとみられるか否かによって判断すべき」としました。「使用されて労務を提供」という言葉から読み取れるように、商業使用人の概念を「労働者」とほとんど同一の概念で捉えていて、極めて狭く捉えてしまっています。ここが非常に問題です。その上で判決は、支部長(代理店長)に労働時間や勤務場所、従業員の採用などについて一定の裁量があるとして、商業使用人に当たらないと判断しています。

問題はやはり、ベルコの労働現場の実態を見なかったことです。私たちは支部長会議をはじめとして、支部長(代理店長)や原告が録音した膨大な資料を裁判所に提出しました。業務の遂行に関して、強度の指揮命令や拘束性があることを示す証拠であったにもかかわらず、裁判ではそのほとんどが事実認定されませんでした。

とりわけ、本社の営業本部長が労働組合の結成を妨害しようとした動きについて、裁判ではまったく見落とされています。私たちは、本社の営業本部長が北海道に来て支部長(代理店長)と話した際の録音や、原告らと新しい支部長(代理店長)との面談の際の録音などを証拠として提出しました。これらの証拠から、原告2人だけが新しい支部(代理店)に採用されなかった背景には、ベルコ本社の動きがあったことは明らかです。これはつまり、ベルコ本社が使用者として人事権を行使しているということです。解雇は指揮命令権限の最たる権限です。裁判では、会話の一つも事実認定されませんでした。一方で、判決は、契約形式に関連した証拠を事実認定しました。契約形式ありきの判決だと言えます。

今後の展望

高裁では、地裁判決が見落とした証拠、指揮命令関係の実態などをあらためて強調し、支部長(代理店長)が独立した事業主ではなく、商業使用人であることを訴えていきます。

この裁判は、雇用社会に大きな影響を与えます。労働分野だけではなく、葬儀サービスの利用者から見ても問題はあります。人生の最後を託す大切なセレモニーが、利用者が託したと思っていた会社ではなく、業務委託契約の会社が責任を負っている。それでいいのかということです。

裁判とともに労働委員会も同時並行で進めてきました。来年初頭をめどに命令が出る予定です。労働組合の皆さん、メディア、地域社会などとともに、このような働かせ方は許せないという社会的な世論を形成していきたいと思います。

不当判決の旗を掲げる弁護団のメンバー
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