沖縄県民投票のその後沖縄県民は意思を明確に示した
沖縄の声に今度は人々が応える番だ
民主主義の問題
辺野古埋め立ての賛否を問う沖縄の県民投票が2月24日、実施された。結果は、「反対」が43万4273票と投票総数の71.7%に上り、「賛成」11万4933票、「どちらでもない」5万2682票を大きく上回った。
「反対」票は、知事の結果尊重義務が生じる投票資格者総数の4分の1を超え、投票率も過半数を超えた。
にもかかわらず政府は、翌日も工事を続け、さらにその約1カ月後の3月25日、辺野古沿岸部の新たな区域で土砂投入を始めた。「『辺野古』県民投票の会」の元山仁士郎代表は落ち着いた口調ながら怒りを隠さない。
「理不尽さに憤りを覚えています。県民の意思が示された以上、工事を中止するのがあるべき姿です。でも、そうなっていない。その現状は民主主義の理念に反しています」
「これは基地問題だけではなく民主主義や地方自治の問題です。選挙で意思を示すという沖縄県民の基本的人権がないがしろにされています」
沖縄の底力を示した県民投票
元山さんは、大学院を1年間休学し「『辺野古』県民投票の会」の代表として活動。県民投票に向けた署名集めに奔走し、条例の成立後、一部の自治体首長・議会が県民投票実施に反対した際には、ハンガーストライキにも踏み切り、全県での投票実施に尽力した。
そんな元山さんは「今回の県民投票で、沖縄県民・ウチナーンチュの底力を感じた」と振り返る。「反対票の多さや投票率の高さは予想以上でした」。長らく続く基地論争で、現状を変えられないと諦めの気持ちを抱く人も少なくない。そうした中でも沖縄県民は反対の意思を明確に示したからだ。
「信念を持って動けば、それに応えてくれる人たちがいる。それを実感できたことは貴重な経験だった」と元山さんは振り返る。
「どこにもいらない」では変わらない
県民投票で思いは示された。次は、政府や県外の人たちが、元山さんや沖縄県民の声をどう受け止めるのかだ。
「私たちとしては『いじめ』をやめてくれと要求しているだけ。でも、『いじめ』を傍観したり、『裏で操っている先生が悪い』と言う人がいたり。本当は、今殴られている状況を止めてほしいだけなのに、受け止め方にずれを感じてしまいます」と元山さんは話す。元山さんたちが求めているのは、まずは辺野古の埋め立てを中止することで、「安倍政権の打倒」ではない。目の前にある要求を一つひとつ実現するために、何ができるのかが問われている。
岩手県議会は3月25日、「沖縄県民投票の結果を踏まえ、辺野古埋立て工事を中止し、沖縄県と誠意を持って協議を行うことを求める」意見書を賛成多数で可決した。元山さんは「この国の安全保障を政権に任せきりにするのではなく、一人ひとりが考えてほしい」と訴える。
毎日新聞が今年3月に実施した世論調査で、沖縄の米軍基地が「あなたの住む地域に移設されるとしたら」と尋ねた。その結果、「反対」が62%で、「賛成」の21%を大きく上回った。
「日本の安全保障のために米軍基地が必要ということなら、『自分の地元に米軍基地があったら』ということも含めて考えてみてほしい。米軍基地は『どこにもいらない』という人もいるが、それだけでは沖縄に基地が置かれ続ける構造は変わらない」と元山さん。今までとは違う、一人称で語ることが重要だと訴える。
4月21日投開票の衆議院沖縄3区の補選。辺野古反対を訴える屋良ともひろ氏が当選を果たした。沖縄は十分に意思を示している。問われているのは、日本社会がその声にどう応えるかだ。