【第3編】職場~企業と「カイシャ」の違いを知っていますか~時間ドロボウ
弁護士たちが指摘する「時間ドロボウ」(「労働者の宿命」の正社員版)。カイシャでは正社員の労働時間が狙われ、奪われようとしています。一例は「サービス残業(不払い残業)」です。決められた時間より多く働いたり、休日に出勤して働いたらその分の割増付きの賃金をもらうのは当然なのに、記録しなかったり、申告させなかったり、自宅など外へ持ち帰らせたりして、その時間はなかったことにされるのです。もちろん労働基準法違反で、懲役や罰金があります。しかし、現実には日常茶飯事です。
大っぴらに法律違反したくない会社は巧妙です。残業代を支払わなくてよい管理職に仕立て上げたり、残業する前から固定の残業代込みの労働契約にして働かせたりします。始業・終業間際、休憩中、待機時間などを絡ませて時間を削ったり、着替えや掃除などを別枠にしたり、時間の端数分をケチったりします。よく考えれば、有給休暇を取らせないとか、取りにくいという状況自体もそうです。
さらに、舞台は労働法そのものを変える攻防まで進んでいます。働いた時間どおりではない労働時間にみなす「みなし労働時間制度」の種類と範囲を広げて、合法にしてしまうつもりです。「裁量労働制」「みなし労働時間制」「高度プロフェッショナル制度」などですが、聞いたことありますか。固定残業代込みというのもみなし労働時間制度です。みなしているうちに、働いた分は消えてしまう。まさに時間ドロボウ。
虎視眈々と正社員の労働時間が狙われています。働いた分の労働時間が長い方が的が大きくなり狙いやすいでしょう。また同じ時間でも過重な労働ほどうまみが増します。あなたは、日本の正社員の労働時間が極めて長い本当の理由を知りましたね。長時間労働は長時間だから問題だ、ということではとても収まりません。また、非正規労働者は労働時間が短いから労働時間が狙われにくく、その代わりに狙いやすい他のものを、そう、常に直接に賃金を狙われる理由がわかったはずです(「労働者の宿命」の非正規版)。
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。