渋谷龍一のドラゴンノート2020.08-09

【第4編】パートナー〜そろそろ「オトコ社会」に気付きましたか〜ワーク・ライフ・バランスの不思議

2020/08/17

「女性活躍社会」と同じくらい珍奇なのが「ワーク・ライフ・バランス(WLB)」です。ワーク・ライフ・バランスとは仕事と生活の調和と、非常に耳あたりがよい言葉です。学者はなぜかあまり指摘しないのですが、この言葉は英語には違いなくても、多用されているわけではありません。類似する用語で国際的に通用しているのは、「ワーク・ファミリー・コンフリクト(WFC)」です。つまり仕事と家族責任の葛藤や対立です。

仕事に比重をかければ家族責任が犠牲になるし、家族責任に比重をかければ仕事が犠牲になる。せめぎ合う関係です。あなたとパートナーの仕事責任と家庭責任のせめぎ合いですから、日常生活を如実に示します。巣ごもり生活の前後で何も変わらないわが家で考えれば、その通りで、わかりやすい。

そんな気持ちでワーク・ライフ・バランスなる言葉をもう一度考えると意味不明です。仕事と家族責任のせめぎ合いはどこへ霧散したのでしょうか。また仕事はともかく、生活とはあいまいです。生活とは仕事以外の私生活のことですから、レジャーや趣味の活動も含まれます。在宅勤務となったパートナーは、「身体が重い」と知らぬ間に1人でランニングに行ったりしていませんか?

あなたが家事や育児で汲々としているのに、パートナーはワーク・ライフ・バランスが大切だから仕事だけではだめだと他のことに熱心になったら、会社人間じゃなくなったと素直に喜べますか? そういう話ではないはずです。

そういえば、コロナ禍の前も、会社がワーク・ライフ・バランスだといって定時帰宅や残業禁止を実施しても、男性たちはなかなか家に帰ってきませんでした。これぞ世界標準のワーク・ファミリー・コンフリクトでしょう。

日本ではよくわからないワーク・ライフ・バランスがどうして流布しているのか、時に、ワークとライフの相乗効果が大切だ、とまで言われるのが不思議なのです。

渋谷 龍一 (しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
『女性活躍「不可能」社会ニッポン原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)で2016年貧困ジャーナリズム賞を受賞。
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