特集2020.11

テレワーク探求業界別テレワーク事情
加盟組合関連業界の現状をリポート

2020/11/13
情報労連に関連する業界のテレワーク事情をリポート。情報サービス、通信建設、コールセンター業界の三つの業界の現状を報告する。

事例(1) 情報サービス業界

客先常駐でもテレワークを導入顧客先によって対応が異なる事例も

  • 齋藤久子 情報労連中央執行委員

ヒアリングから見えた実態

IT産業は、従来テレワーク導入が進んでいる産業である一方、顧客システムの構築や保守運用など顧客企業内で従事する「客先常駐」の形態も多く実在しています。情報労連では、本年7月に客先常駐者に対する感染症対策の実態について、加盟組合へのヒアリングを行いました。その一部を紹介します。

特筆すべきことは、従来、困難と考えられてきた「客先常駐」へのテレワーク導入が、今般の感染症防止対策を契機に、大きく進展してきていることです。ヒアリングでは、顧客との調整を通じ、客先常駐者にもテレワークが適用されたとの回答が多くの組織から寄せられ、客先常駐という働き方自体を見直す機運になっていることがうかがえます。

一方、顧客企業の社員では、感染症対策としてテレワークが導入されているものの、客先常駐者には適用されず安全衛生対策から取り残されるという事例や、感染症対策を「顧客先の対応に合わせる」とした結果、同じIT企業の社員であっても常駐する顧客先によって対応が異なり、統一的な安全対策となっていない等の事例も寄せられました。さらに、顧客先で用意されたオフィスルーム環境が、手狭かつ換気などの感染症対策が不十分であった場合でも、立場上、顧客先への改善要望が難しいとの声も上がっており、取引企業間において企業の枠を超えた安全衛生対策の必要性が改めて浮き彫りになる結果となりました。

対策としては、「常駐先の顧客企業」と「常駐者を雇用するIT企業」の間で、客先常駐者も含めたプロジェクト全体にかかる安全衛生対策やBCP対策について、あらかじめ協議をし、事前のルール整備を行うことが考えられます。

情報労連としても、今回のヒアリングをもとに、実務上どのように対応したのか、課題は何かなど、あらためて掘り下げ、誰も取り残すことのない安全衛生対策のあり方について検討を進めていく所存です。

事例(2) 通信建設業界

オフィス系ではテレワーク可能現場では各種の感染症対策を実施

  • 梅田貴史 通建連合事務局長

現場では難しいテレワーク

新型コロナウイルス感染症の感染拡大が始まってから半年以上が経過しました。通建連合の加盟組織では、本支店、営業所等でデスクワークなどに従事する組合員は、職場が密にならないようにテレワークを併用し、ウェブ会議やメール等を活用しながら業務を遂行し、感染拡大防止に努めています。

テレワークの課題としては、直接的なコミュニケーションが取れないことや、その場にいないことによる物理的なやりとりができないなどの問題が散見されます。また、在宅勤務では、自宅にいることが多くなり、仕事と私生活のメリハリや労働時間の管理等が問題視され、メンタルヘルス等の体調管理でも注視しなければならない状況があります。

一方、現場に従事する組合員は、テレワークはなかなか実施できない状況にあります。現場では感染拡大防止に努めながら、通信の維持・向上のため、感染リスクがありながらも日夜労力を費やしています。現場に従事する組合員からは、「お客さま自身がマスク着用をしていなかった」「のどが渇いてせき込んだら、お客さまから『大丈夫か』と必要以上に言われた」──など、現場対応に困惑・苦慮する意見が上がってきています。

通建連合は加盟組織と連携し、コロナ禍における職場環境等の課題把握と対応に努め、現場対応等のルールについて、安全衛生委員会等の場で会社と協議しています。

具体的なコロナ禍での取り組みは、(1)熱中症対策として冷感マスク・マウスシールドを配布(2)入場者に対する検温チェックとして体温検知システムのセンターへの配備(3)職場クラスターが発生したことを想定した、職場内分散の実施と事務所内パーテーション設置(4)集合型会議からウェブ会議への対応(5)通勤時の感染リスクの軽減を目的にしたマイカー通勤(特別措置)による適用拡大(6)濃厚接触者の疑い等への対応として特別休暇の拡大(7)BCP(事業継続計画)の充実(8)協力会社支援として工事中止に伴う費用の支払いおよび特例払いの運用拡大(9)消毒用アルコールスプレーの現場配備(10)九州災害復旧(台風9号・10号)に対する広域支援者へのPCR検査の実施(11)交通誘導員へのマスク提供──などさまざまなな取り組みが各社で行われています。

通建連合は引き続き、働く仲間の安全と健康を第一義に考え、情報労連と連携した取り組みを進めていきます。

事例(3) コールセンター業界

集約型から分散型へ在宅型コールセンターも登場

  • インタビュー 一般社団法人 日本コールセンター協会

テレワークの導入が進む

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「巣ごもり」需要への対応などでコールセンター業界への需要は高まった。

一般社団法人日本コールセンター協会の担当者は、「コールセンターは社会インフラとして事業継続を期待される一方、情報セキュリティーの観点から在宅勤務への移行がすぐには困難という状況に置かれました」と振り返る。コールセンター事業を請け負う企業は、自社判断だけで在宅に移行するわけにはいかないため、「クライアントからの理解を得ることにも苦労しました」(同)。

しかし今回、新型コロナウイルスが広がり、コールセンターが社会インフラとして認識されたことで、事業継続や従業員の健康確保という観点から在宅のコールセンター業務は着実に進んだ。

協会が毎年行っている『コールセンター企業実態調査』によると、「在宅テレコミュニケーターをすでに採用」している企業は2018年の3社、19年の3社から、今年は14社に大きく増えた。ヒアリングをすると、ほとんどの企業がコロナの影響と答えた。「コロナが後押しの要因になったことは間違いありません」と担当者は背景を分析する。

これまで、在宅でのコールセンター業務が広がらなかった要因には、特に「情報セキュリティー」があった。しかし、近年は、クラウドのシステムが進化し、セキュリティー対策などが取られたシステムが短期間で導入・運用が可能になっている。BCPや人材確保、通勤コストの削減などの想定されるメリットとデメリットを総合的に勘案して、必要であれば導入できる環境は整っている。「あとは経営判断の問題です」と担当者は話す。

コールセンター業界でテレワークを先進的に進めるのがNTTコムチェオだ。インターネット接続やPCサポートなどのヘルプデスク業務を中心に事業展開している。同社は、採用(委託)から研修、業務開始からフォローアップまですべてリモートで行っている。テレコミュニケーターのフォローアップなどのために、SNSや自由参加の勉強会の場などを設けていることも特徴的だ。

在宅勤務のメリットの一つは、全国各地の希望者が採用対象者になることだ。

「これまでは、人がセンターに集まるという『人が動く』スタイルでしたが、今は『業務を動かす』スタイルに変わりつつあります」と担当者は解説する。在宅勤務のように業務を人に合わせて分散させることで、事業継続や人材確保にもつなげるねらいがある。サテライトオフィスの活用も進んでいる。

今後、コールセンター業界でテレワーク推進のカギとなるのが業務の切り分けだ。ヘルプデスクのように個人情報の取り扱いが比較的少ない業務はテレワークにも移行しやすい。テレビショッピングのように受注に繁閑の差がある業務もテレワークで柔軟な配置ができることによるメリットがある。

企業の経営戦略として、コールセンター業界でのテレワーク推進はさらに進みそうだ。

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