特集2020.11

テレワーク探求加盟組合はどう活用している?
リモートツールの活用事例紹介

2020/11/13
情報労連加盟組合はリモートツールをどのように活用しているのか。「組合員説明会」「執行部活動」「団体交渉」の三つの事例を紹介する。

事例(1) NTT労働組合ドコモ本部

リモートツールを活用した組合員への説明会を開催

  • 植田 和孝 NTT労働組合ドコモ本部企画・組織部長

NTT労働組合ドコモ本部は、在宅勤務や育児等の短時間勤務を取得している組合員でも参加しやすいよう、リモートツールを活用した説明会を開催しています。導入にあたっては、組合員の利用シーンやシステムの特性を踏まえた検討をしました。

まずは、会議ID・パスワードを知らせるだけで簡単に参加できるオンライン会議システムの活用です。オンライン会議システムは、リアルタイムで双方向のやり取りが可能です。その結果、説明会中でも組合員から気軽にチャットで質問・意見が上がるようになりました。

次に、昼休みや業務終了後の説明会には参加できない組合員に向けて、YouTubeを活用した動画配信を行っています。動画は、移動時間に視聴する組合員も想定し、プレゼンターの音声に字幕をつけるなど工夫をしています。リアルタイムではないため、別途意見集約を行う必要がありますが、好きな時間に視聴できるため、多くの組合員が利用しています。

また、オンラインツールの活用に加え、ホームページにアクセスしてもらうことで、プレゼン資料等をいつでも閲覧できるようにしています。

組合員からは、参加方法の選択肢が広がったことで概ね好意的に受け止められています。一方で、動画視聴は一方通行のやりとりとなるため、各職場で組合員からの意見を集約し、組織的合意形成を図るという点ではまだ改善が必要だと感じており、今後の検討課題です。

今後、組合員のリモートワークが普及すると想定していますが、集合・対面型とリモート型を効果的に組み合わせ、組合員とのつながりをより強固なものに発展させていきたいと思います。

事例(2) KDDI労働組合

組合執行部活動における リモートツールの活用事例

  • 登尾 直樹 KDDI労働組合事務局長

新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、KDDI労働組合は、3月にはオンライン会議システム(Zoom)を導入するとともに、クラウドストレージサービスを併用した執行活動を行っています。また、紙の機関紙の配布を取りやめ、「Web機関紙」としてリニューアルし、ホームページでの配信に切り替えました。

オンライン会議の導入に当たっては、使いやすさや会議機能などを重点的に比較した上で選定、導入しました。クラウドストレージはテレワークでの業務遂行を踏まえ、契約容量を増やしました。

組織内のコミュニケーションの工夫として、週2回は全役職員でミーティングを開催し、業務上の報告を共有するだけでなく、体調など健康確認を行っています。また、労使交渉もすべてオンラインで実施しています。オンラインでのミーティングや会議の際は、原則としてカメラをONにし、お互いの様子が見える状態とすることを意識しています。

リモートツールでの執行活動は十分可能です。しかし、以前のような事務所内での日常会話がなくなってしまったことから、ちょっとしたミスに同僚が気付きにくいという課題もあります。リモートでの活動を前提としながら、小さなコミュニケーションを大切にすることができるようなノウハウの検討が重要だと考えています。

労働組合は“Face to Face”といわれるように対面での活動を重視してきました。そのため、リモートツールによる活動の経験を十分に持ち合わせていなかったことから、新たな活動手法を見いだす機会になったと思います。現在、リモートツールを活用した組合員からの相談対応やオンラインでのレクリエーションの開催、テレワークでの業務遂行をよりスムーズに行うために業務文書の完全クラウド化など、時間や場所にとらわれない新たな活動や取り組みを検討しています。環境が変わっても組合員が労働組合をより身近に感じることができる機会につなげたいと思います。

事例(3) De-self労働組合

中小労働組合におけるオンライン団交交渉時に気を付けるべきポイントは?

  • 中野 匡 De-self労働組合中央執行委員長

私たちDe-self労働組合のいくつかの支部ではZoomやwebexなどを使いオンライン団交をするようになっています。当初は対面形式で何とか継続してきましたが、感染者の増大と公共の会議室が使えなくなったため、経営側からのオンライン開催提案をやむなく受け入れることにしました。

オンライン団交を実際に行ってみると組合側は十分注意しなければならないことがわかりました。それは、オンライン団交は議題やその時の労使関係の状況により適・不適があることです。安定的な労使関係の下での団体交渉や、情報共有や通知事項であればオンライン方式で問題ありませんが、労使関係が不安定または格差がある場合や、議論を深く突っ込んで妥協点を探っていく、または追及していくような議題の際にはオンライン団交は不向きです。オンラインではその場の緊張感や空気が伝わらず、画像や音声をずらしたりカットすることができることも要因です。

こうした場合、逆に言えば、経営側は対面の時よりも組合との論議や追及を抑えられ、自分たちのペースで交渉を進められるメリットがあることに気付いているかもしれません。交渉自体は実際に行っているため、不当労働行為と指摘されるリスクも少なくなります。実際にオンライン団交のマニュアルを作成して推奨し、今後の団交の主流になるとまで書いている経営側の弁護士もいます。

コロナが終息し対面形式が復活するとしても、経営側は何かと理由をつけてオンラインでの団交に誘導することが予想されます。組合側もオンライン団交の対策をするしかありません。事前の資料読み込み、出席者の打ち合わせ、当日の役割分担はより重要になります。また、オンラインの主催者が発言や録音等の権限を持つことになるので、労使交互に主催者となるなどのルールを認めさせることが必要です。

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