【第4編】パートナー〜そろそろ「オトコ社会」に気付きましたか〜産後のポチッ3
「産後のポチッ」を理解できたあなたは、日本の出生率の低下傾向に対する見方が変わってくることでしょう。出生率の低下が止まらない、と少子化への危機感が高まり、当初は威勢のよい政策が宣伝されていましたが、やがて下火となり、諦め感に代わりました。
出生率の低下の原因といえば、非婚化、晩婚化、晩産化、保育所の不足などが定説です。確かにそれらにも原因がありますし、出生率の低下を目に見えるもので説明したいのはわかります。しかし「わが家」で考えればすぐに気付くことまでなかったことにするとは一体どういうことでしょう。
子どもを産んでも育てにくいところまでは何とか理解されていますが、そこからは一歩も進みません。女性が育てやすい働き方とは? 女性が助かる家事サービスとは? 女性が……女性が……。じゃあ男性は?
女性は、自分にだけ負担がかかって生活がゆがんだり、ゆがんではいないでしょう、と強要されるのを知っているから嫌気が差しているのです。小林美希さんの『ルポ 産ませない社会』も読んでいるし。
負担が大きいから2人目を諦める。あるいは1人目から、つまり出産を諦める。産ませないようにしているくせに、一方で産まない責任を求められ、それでも女性は産まなきゃ、育てなきゃ、と男性から聞かされます。こういう男性がパートナーだとどうなるか想像できるでしょう。そのパートナーは家の外で、「邪魔だどけっ」と子連れ妊婦の腹を蹴ったり、「ポテサラくらい自分で作れ」と絶叫しているかもしれないのですよ。
「オトコ社会」の恐ろしさに気付きましたか。女性のライフコースに埋まっている産後のポチッの脅威、パートナーが心を離そうとしないカイシャや、パートナーが体現する正社員と表裏一体の非正規労働者。「寿退社」が死語になって登場した妊娠解雇。世間からの同調圧力の正体を感じることができれば、日本社会の仕組みが見えてくるはずです。
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。