特集2021.04

もっと労働組合 ─つくろう、入ろう、活用しよう─労働組合でここまでできる
地域・中小労組の事例紹介

2021/04/14

連合ユニオン東京

労働組合は会社の体質を確実に改善していく

コロナを理由にした解雇が横行

昨年6月、連合東京には例年のおよそ4倍の労働相談が寄せられた。

「当時寄せられた相談の多くは、雇用調整助成金や休業手当に関する相談だったが、最近では解雇や雇い止めに関する相談が多い」と連合ユニオン東京の湯淺祐樹書記長は話す。

「特に最近は、コロナを理由にした解雇が横行している」と話すのは、連合東京ユニオンの関英二さんだ。経営状況の悪化を理由にした解雇は、法的には整理解雇にあたる。だが、それを行うためには「整理解雇の四要件」を原則満たす必要があり、簡単に認められない。有期雇用の雇い止めであってもそれは同じだ。労働組合が会社にそのことを伝えると、会社は別の理由を持ち出してくる。「コロナは建前で、目先の人件費カットがねらいなのは明らか」と関さんは説明する。湯浅さんは、「弱いところから切っていけばいいという感覚を持つ会社が多い」と話す。

相談者の中には、「コロナだから仕方ない」と諦めてしまう人も多い。相談では労働組合を結成して会社と交渉する方法があるなどと伝えている。湯淺さんは、「労働法を知らない人が多い。諦めずに相談してほしい」と話す。

職場の体質改善

最近の相談の特徴的な動きとして、「産別などの上部団体に加盟していなかった労働組合からの相談が増えている」と湯淺さんは明かす。

これまで企業内の労使だけで対処してきた労働組合が、コロナの影響で会社からのプレッシャーが強くなり、圧力に負けてしまうからと上部団体への加盟を相談する事例が増えているのだという。

「上部団体に入れば、要求書や労働委員会へ申し立てなどを連名で行うことができる。会社の姿勢も変わる」と湯淺さん。実際、不利益変更を今年4月から導入されそうになった企業に申し入れをしたところ、導入をいったん見送り、労使で継続協議することになった事例もある。「上部団体は抑止力になる」と湯淺さんは訴える。

ポスト・コロナを見据えても、労働組合が果たすべき役割は大きい。「コロナ禍を労使が協力して乗り越えることができれば、労使が一体になり、どんなことがあっても乗り越えられる労使関係ができる」。関さんはそう強調する。

労働組合を結成して会社と交渉すれば、事態は改善する。だがそれは劇的な変化とは限らない。

「労働組合をつくったからといって事態がすぐに改善するわけではない。でも、労働組合があると改善することは必ずあるし、少しずつ変わっていく。活動を続けると職場環境が変わったとわかる」と関さんは話す。例えば、ハラスメントに関する申し入れをすると会社もその申し入れを意識せざるを得ない。しばらくすると結果的にハラスメントが少ない職場になっていく。関さんは、「少数組合でも組合の力はやっぱり強い。やる価値はある」。湯淺さんは、「憲法で保障された労働者の権利を生かしてほしい」と力を込める。

労働組合は企業の体質を確実に改善していく。その価値をどれだけ共有できるかが大切だ。


協和テクノロジィズ労働組合

職場を良くしていきたいその思いが組合活動を活性化する

年間通じて充実した活動

情報労連近畿ブロック支部に加盟する協和テクノロジィズ労働組合(組合員数約240人、通信建設業)は、年間を通じて、さまざまな活動に取り組んでいる。10月は定期大会、冬にかけて年末一時金交渉、年が明けると春闘、春から6月にかけては組合主催の研修会、夏には夏季一時金に関する交渉、秋に向けては大会の準備──。組合主催の研修会も、新入組合員、入社6年目、組合代議員、女性組合員を対象にして、それぞれ開催している。

組合には、組織部、福利厚生部、調査部、教育宣伝部の四つの部門があり、さらには、年に6回、代議員会などで現場の声を吸い上げている。執行委員会は平均週1回、多いときには週2回開催する。

会社との団体交渉は最低でも年6回実施。その他に労使協議会を開き、経営状況などを会社側と共有している。

このように、協和テクノロジィズ労働組合は、充実した組合活動を行っている。太田翔委員長は、「組合結成から60年以上の歴史があり、活動が築き上げられてきたから」と話す。

対等に交渉できる

ただし、悩みもある。太田委員長は、「組合員にとって労働組合のあることが当たり前になってしまい、ありがたみを感じてもらえないこともある」と打ち明ける。

そうした課題を乗り越えようと、太田委員長は組合員に身近な活動を心掛けている。そのために、組合員1人とか2人からの要望でも、必要があれば団体交渉の要求事項に載せるようにしている。例えば、蛍光灯がなくて作業がしづらいという声があれば、会社に要求する。「職場環境の改善は、成果を感じてもらいやすい。小さなことでも目に見える成果を感じ取ってもらいたい」と話す。

太田委員長は、労働組合のメリットについて、「経営側と賃金や職場環境について対等に話し合いができること。これに尽きると思う」と話す。団体交渉の席で交渉相手として向き合う経営側は、みな年上の会社の上司だ。しかし、団体交渉や労使協議の場面では対等に扱ってもらえる。

会社を変える意識

労働組合の活動をしていなかったら、自身の成長の仕方も変わっていたと太田委員長は振り返る。人脈の広がりもそうだし、特に仕事に対する考え方がそうだ。労働組合役員をしていると、会社経営の状況を理解しつつ、職場の課題を会社に説明する力も必要だ。「多角的にモノを考えるようになった。人間として成長できた」

協和テクノロジィズ労働組合が充実した活動を継続できる理由について太田委員長は、「会社を変えていこうという意識があるから」と分析する。

「労働組合は、職場を良くしていこうという思いが集まる場所。会社を良くしていきたいという人が職場に3分の1でもいて、発言をしていけば、周りの人たちも自然と発言するようになる。そういう小さな積み重ねが職場環境を良くしていく」と太田委員長。労働組合活動が組合員の主体性を育てる。それは企業の活性化にもつながる。

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