もっと労働組合 ─つくろう、入ろう、活用しよう─女性の参画で労働組合の活性化へ
参加を阻むハードルの解消を
女性参画と組合活動
連合は、「第4次男女平等参画推進計画」プラス(計画期間:2020年10月〜2021年9月)の目標の一つに、「多様な仲間の結集と労働運動の活性化」を掲げた。女性組合員の拡大やそのことを通じた運動の活性化をめざしている。
女性の労働組合員数は343万5000人。女性雇用者数に占める女性の労働組合員数の割合は12.8%で、男性の約20%に比べると低い(「労働組合基礎調査」2020年)。
「女性は非正規雇用の割合が高く、女性が労働組合にかかわる機会が少ないことが課題」と連合の井上久美枝総合政策推進局長は話す。労働組合への参画を促すためには、「パート労働者の時給が上がった、とか、正社員登用の仕組みをつくったとか、労働組合による処遇改善の成果を伝え、関心をもってもらうことが大切」と訴える。
一方、「組合活動への女性参画を広げるためには、組合活動を見直す必要もある」と井上局長は指摘する。組合活動は、終業時間後に行われることが多い。仕事を終えたあとに労働組合の長い会議や懇親会があると参加できる人の幅が狭くなる。それが結果的に家庭責任を負う女性の参加を阻んできた。
そうした課題を解消するため、最近では、「執行委員会の時間を何時までと決めておく」「報告事項は事前にメールで流しておく」「昼休みに短時間で開催する」「懇親会は1次会で終わらせる」──など、組合活動を工夫する動きも広がっている。「コロナ禍でオンライン会議システムが広がった。ウェブを活用すれば、これまで組合活動に参加しづらかった層にもアプローチできる」と井上局長は話す。
活性化できる
参加者の幅を広げれば、それは組合活動にも反映される。例えば、ある企業では、子どもの「入学祝い金」に世帯主要件があり、多くの女性従業員が「祝い金」を受け取れていなかった。その後、女性が労働組合の執行委員になり、この問題を指摘したところ、世帯主要件がなくなり、女性従業員にも「入学祝い金」が支給されるようになった。
井上局長は、「属性の似た人ばかりではおかしいと思われなかったことも、違うメンバーが加わることで問題に気付くことができる。多様な声を反映することで組合活動を活性化できる」は訴える。
意思決定の場の変革
組合執行部の運営にも課題はある。例えば、業務の偏りもその一つだ。井上局長は、「女性役員がジェンダーや男女平等を担務することが多い一方、組織や政治、交渉を担当する女性役員は少ないというデータもある」と指摘する。
交渉を担当すると、会社の状況もわかり、要求を実現するための交渉術も学べ、ステップアップになる。しかし、男性がそうした業務を担うことが多いため、女性が執行委員になっても自分は必要とされていないと感じて辞めてしまうケースも少なくないと井上局長は話す。「交渉をはじめ、幅広い仕事を担いながら、組合活動で成功体験を得てほしい」と強調する。
また、委員長や事務局長のような「三役」に女性が少ないことも課題だ。役職に就く女性役員は増えていることから、「トップの英断が必要」と井上局長。「女性はリーダーをやりたがらないと思っている人は労働組合の中にもいる。そうした意識も変えていかないといけない」と話す。世界では、「ジェンダー平等を頑張らないと」というのはもう過ぎて、「ジェンダー平等は当然」となってきているとも指摘する。
今後に向けては、女性組合員の数を増やし、組合執行部のジェンダーバランスを平等にしていくことが重要だと訴える。
「男女平等のためには意思決定の場における女性の参画が大切。女性が労働組合に参画し、企業や地域、政治にかかわっていけば、社会を変えることができる。労働組合というツールを活用してほしい」