特集2021.04

もっと労働組合 ─つくろう、入ろう、活用しよう─米グーグル労組にインタビュー
組合結成の狙いや思いを聞く

2021/04/14
今年1月、米Googleとその持株会社であるAlphabetの従業員が、全米通信労働組合(CWA)の協力を得て「Alphabet Workers Union(アルファベット労働組合)」を結成した。同労組の設立メンバーの一人であるアレックス・ピーターソン氏に組合結成の狙いやIT労働者の組織化などについて書面インタビューした。
アレックス・ピーターソン Alphabet Workers Union

──十分な収入を得られるはずの巨大IT企業の労働者が、労働組合を結成したのはなぜですか?

お金は生活の一部に過ぎません。私たちには、健康や自由時間、安全、社会的関係などが必要であり、それは私たちの仕事のあり方と切り離せません。多くのIT労働者は依然として低賃金です。高給の労働者でさえ、恣意的な理由で予告なしに解雇される可能性があります。

私たちにとって大きな転機となったのは、ティムニット・ゲブル氏の解雇でした。彼が解雇されたのは、組織化に動いた5人のグーグル社員が解雇されてからわずか1年後のことでした。これは、「あなたたちは使い捨てですよ。会社の指導に不満があるならいつでも終わりにできる」というメッセージでした。この怒りが私たちを組合結成に駆り立てました。

公共の利益のためにも労働組合が必要です。当社のサービスは何十億もの人たちが利用しています。そうした企業の経営者は大きな社会的影響力を持っていて、しばしば神格化されますが、人間としての限界から誤った判断を下すこともあります。労働組合の主な目的は、経営陣の決定に対峙する力を得ることです。政治が企業に規制をかけられなくても、労働組合があれば、企業に対する規制力を発揮することができます。

──契約・請負労働者も含め、関係する労働者の処遇改善を訴えています。

派遣労働者(Temp)、協力会社(Vendor)、契約社員(Contract)──。こうした「TVC」の労働者がいなければ、アルファベットが事業を続けることはできません。彼・彼女たちの存在が会社の利益に結び付いています。そうした労働者の保護は、慈善ではなく必然的に取り組むべきものです。

「TVC」の仕事は、コンテンツの評価や調査、適正化、カスタマーサポート、従業員への手当の支払いなど非常に幅広くあります。特に、コンテンツ適正化の担当者は、違法で不快なコンテンツを毎日閲覧することで、精神的なダメージを受けています。YouTubeはこの仕事がなくては安全に運営できません。

「TVC」の中には、すでに会社と交渉をしている人たちもいます。アルファベットユニオンは、その要求の実現に向けて、本社をはじめ関係企業との調整で力を発揮することができます。

──世界的にIT労働者の組織は進んでいません。

IT労働者はますます細分化され、雇用主は労働者の感情を微妙にコントロールし、搾取を正当化しています。私たちの生活は、製品の検索と購入、不健康な労働時間に費やされる一方、家族と過ごす時間は短くなっています。職場では人間関係が、ストレスと締め切りによって希薄になり、孤立は社会的な問題になっています。

労働組合の組織化には、人間的な利益のための要素が凝縮しています。

──倫理的なITの普及のために技術者に何が求められているでしょうか。

企業が「デジタルウェルビーイング(健全なデジタル利用)」を発信することは注目に値しますが、課題は残ります。私たちは、健康、安全、倫理に関する仕事により多くの人員を割り当てるように会社に働き掛ける必要があります。

ITは、マイノリティーの集団がつながり、力を持つことのできる世界をつくりました。私は今、「グローバルサウス」で効率的に安定した農業を可能とするための仕組みに関心を持っています。当社のプラットフォームは自由な社会のために用いるべきです。

──日本の労働者にメッセージを。

10歳のとき『千と千尋の神隠し』を鑑賞しました。素晴らしい映画でした。私たちは皆、美しい夢の創造者ですが、非人間的な世界は依然として存在します。だから私たちは行動しなければなりません。私たちはお互いから学ぶことがたくさんあります。自由のために団結しましょう。夢を実現しましょう。Levent selève(風立ちぬ)、友よ!

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