もっと労働組合 ─つくろう、入ろう、活用しよう─労働組合のオンライン活用事例
執行委員会からレク・定期大会まで幅広く
執行委員会での活用事例
IT企業の労働組合のA労組は、コロナ前から意思決定プロセスの効率化などを目的に、会議体のオンライン化を検討していた。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、その動きを加速させた。
執行委員会にオンラインツールを導入した当初は、担当者が資料の内容を説明し、その他のメンバーが口頭でコメントする、という対面方式と同じ方式で実施した。やってみると意見が上がりづらいなどの課題が浮かび上がった。
次に、そのやりとりに加えて、チャット機能を活用することにした。資料説明の際にもチャット機能で質問やコメントするようにしたところ、質問等が増える効果はあった。一方で、コメントしない人の理解度が把握しづらいという課題が見えてきた。その上で、メンバーの考えを集めるため、小グループをつくって、意見交換するスタイルも導入。さらには、ワードやエクセルの共同編集機能を活用し、参加者全員がコメントをつけることをルール化した。参加メンバー全員に問い掛けることで、以前より意見が集まりやすくなった。また、共同編集機能の活用によって、メンバー同士の考え方に対する理解が深まった。議事作成の手間を削減する効果もあった。一方で、参加メンバー全員の発言等を促す場合は、発言内容が否定されないという心理的安全性の確保が大切だという課題が見えてきた。
職場集会やレクでも活用
A労組では、職場集会にもオンラインツールを活用した。ビデオ配信とアンケートを組み合わせたオンライン職場集会では、アンケートの回答率が前回の対面時から約10ポイント増加した。また、説明資料の公開とウェブアンケートに加え、個別説明会を開催したところ、アンケートの回答率はさらに上がった。オンラインの職場集会のメリットは、時間や場所にとらわれず開催できること。それまで職場集会に参加したことのない層も参加できるようになった。
レクリエーションにオンラインツールを活用する事例も増えている。
有名なフィットネス企業によるオンラインセミナーを開いたり、ヨガ教室を開いたりする組合もある。また、工作キットを希望する組合員の自宅に郵送し、当日はオンラインで講師と一緒に作製するというレクリエーションや、工場に併設した大きな駐車場で、車に乗ったまま映画を見るドライブ・イン・シアターなど、バリエーションに富んだオンラインのレクリエーションが展開されている。
経費精算や役員選挙まで
その他、日常的な業務・活動にオンラインツールを活用する労働組合も増えている。
例えば、経費精算。j.union株式会社の労働組合専用のクラウド型・経費精算システム「ユニオンスマートフロー」は、情報労連も利用している。同社では、Webアンケートシステムも提供。一般的なアンケートのほかに、匿名での投票もできるため役員選挙にも活用できる。
こうした活用事例を踏まえ、j.union株式会社の田中潤さんは「オンラインでできない活動はないと言えるくらい、労働組合活動での活用が進んでいる」と話す。また、中村絵梨佳さんは「これまで組合活動に参加しづらかった層へのアプローチのためにも活用できる」と話す。一方、「すべての活動を無理やりオンラインにする必要もなく、今までの組合活動のいいところを残しつつ、活動の幅を広げることも大切」とも指摘する。オンラインはあくまでツール。労働組合活動の活性化のためにこのツールをどう生かすかが重要だ。