特集2021.04

もっと労働組合 ─つくろう、入ろう、活用しよう─労働組合はこんな風に役に立つ
組合員になった有期契約社員等の声

2021/04/14
有期契約社員等の視点から労働組合はどう見えているだろうか。労働組合のなかった職場から、労働組合のある職場に転職した組合員に聞いた。

企業の枠を超えた交流

NTT労働組合西日本本部の組合員・坂井さん(仮名)の前職はプログラマー。2016年に1年契約の契約社員としてNTTグループの企業に入社し、翌年には労働組合にも加入した。

組合に入ったきっかけは、労働組合が主催するイベント。職場の同僚に誘われて、参加するうちに組合役員と知り合いになり、組合への加入を決めた。

「自分以外の全員が労働組合に加入している職場だったので、入るのは自然な流れだった」と振り返る。

前職の職場には労働組合がなかった。「労働組合は会社と対立するものと思っていて、労働組合にはいいイメージを持っていなかった」と話すが、「入社してみると、違った。労働組合の人たちは、会社と対立するのではなく、労使が協力して会社を良くしていこうとしていた。イメージが変わった」と振り返る。

労働組合に入って良かったこととして、企業の枠を超えて仲間と交流できることを挙げる。

「正社員へのキャリアアップに関する情報を、すでに正社員に転換したグループ他社の組合員から聞くことができた。契約から入った人間にとって正社員への転換はシビアな課題なので、とても助かった。仲間がいる安心感があった」

労働組合の安心感

処遇面でも労働組合のメリットを感じている。「同一労働同一賃金」に関することでは、契約社員も含めて、同じ福利厚生のサービスが使えるようになった。また、無期転換は安心感につながっていると話す。

処遇改善のためにエリア社員制度が創設された後には、自身も2019年からエリア社員に登用された。今年4月からは正社員にキャリアアップする。「正規雇用への切り替えを積極的に働き掛けてくれたおかげで制度ができた。労働組合の活動があったから」と語る。在宅勤務など働き方の格差是正も進んでいる。

労働組合のある会社に入ったことで、労働組合のない会社では労働問題に関する知識が入ってこないことを痛感した。

「前職の職場では、社長の思いが会社のルールになっていたところがあった。そうした会社では法律違反も起こりがち。何かあったときに自分で調べることはできるが、ある程度の知識がなければ、それが問題なのかどうかもわからない。何かおかしいと感じたときに、労働組合があると相談できる安心感がある。労働組合のメリットを組合のない職場の人に伝えていってほしい」

現場の声を伝えられる

KDDIの販売スタッフとして、家電量販店で働く有期契約社員の横井さん(仮名)は、KDDIへの転職で初めて、労働組合員になった。

前職は家電量販店の正社員。職場に労働組合はなかった。横井さんは当時、全国でも上位に入る成績を出していたが、賃金などに反映されることはなく、上司に相談しても、待遇は変わらなかった。周囲には、待遇に不満をもらす人もいた。横井さんは、「声を上げられる場所がないと困る」と感じていた。

当時、労働組合に対するイメージはゼロ。相談先として労働組合が候補に挙がることはなかった。「労働組合という言葉自体、ピンとこなかった」と横井さんは振り返る。

その後、横井さんはKDDIに転職して、KDDI労働組合の組合員になった。KDDI労働組合は2012年に会社とユニオンショップ協定を締結。有期契約社員も含めて組織化を進めてきた。

横井さんが労働組合の活動を初めて知ったのは、春闘。要求立案に向けた労働組合の説明会でのことだった。

KDDI労働組合は、有期契約社員の一時金を春闘で要求し、実際に勝ち取ってきた。その金額も増えてきた。「現場の人間からすると興味の中心になるのは、給与や賞与。同僚とは頑張ってほしいと話してきた」と明かす。

労働組合のメリットは、現場の声を代弁してくれることと横井さんは感じている。「現場の声はなかなか上に伝わらないもの。労働組合は、現場の要望を伝えられる窓口として価値を感じている。実際に待遇にも変化が生じているし、労働組合はあった方がいい。前職に労働組合がなかった分、それを感じる」と話す。

発言できる場があること

同じくKDDIの有期契約社員で、家電量販店で働く古山さん(仮名)も、KDDI労働組合の組合員だ。前職は、個人経営の飲食店の正社員。長時間労働で残業代も支払われず、このままではいけないと思い、転職した。

前職の職場で不満を伝えるには、社長に直接訴えるしかなかった。同僚と労働条件について話すことはあっても、労働組合を結成する間もないほどの長時間労働で、不満を抱えても、退職という選択肢を取るしかなかった。

労働組合については、「交渉の結果、実際に賃金や一時金が上がっている。すごいなと思った」と率直な感想を述べる。

「前職では同僚と相談はしても、発言することはできなかった。諦めて退職するしかなかった。現状で労働条件に不満はないが、発言できる場があることは安心感につながっている」と話す。

現場の声が労組を強くする

現場では、雇用期間の上限や、店舗勤務における感染リスクなどの課題はある。ただし、そうした声を集め、会社と交渉できる土壌があるとないとでは異なる。実際、KDDI労働組合は2021春季生活闘争で、コロナ禍により有効求人倍率が大きく低下していることから、雇用契約期間が満了する契約社員の雇用継続を要求した。

労働組合の機能をより多くの人に伝えるにはどうすればいいか。古山さんは、「労働組合を知らない人はたくさんいる。働く環境を良くしてくれる組織だと伝えたい」と話す。横井さんは、「自分の意見が吸い上げられたと実感できれば、労働組合の注目度はさらに上がるはず」と話す。現場の声が届けられるほど、労働組合は強くなる。現場の声を会社に伝えることが重要だ。

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