特集2022.01-02

石橋みちひろは
こんな人
派遣労働者の声を国に届ける
「派遣かふぇ」に参加する石橋議員

2022/01/19
石橋議員は、派遣労働者の集いである「派遣かふぇ」に継続して参加し、その声を国会に届けてきた。労働組合の代表として、派遣労働者の雇用維持や処遇改善に取り組んでいる。

「派遣かふぇ」の始まり

「派遣かふぇ」という派遣で働く人たちが語り合う集いがある。派遣社員として働く「yurara@派遣社員」さん(ツイッターアカウント@yurara0601)の呼び掛けで始まり、2018年11月から2021年12月まで11回開催されてきた。「派遣かふぇ」では毎回、10〜15人ほどが集まり、体験談や派遣制度の問題点などを語り合っている。

石橋みちひろ参議院議員は、「派遣かふぇ」の1回目の会合から継続して参加してきた。それにはこんな経緯がある。

yuraraさんは2018年2月、立憲民主党の「立憲かふぇ」に参加した。理由は派遣労働者の実態を知ってもらうためだ。その際、出席していた議員を通じて出会ったのが石橋みちひろ参議院議員だった。yuraraさんは、石橋議員に「派遣かふぇ」にゲストとして参加してほしいと要請。石橋議員はそれを快諾し、1回目の集まりで労働者派遣法の現状などを解説した。yuraraさんは「派遣労働者の待遇改善に積極的に取り組んでいる政治家がいて驚いた」と振り返る。以降、石橋議員は毎回のように「派遣かふぇ」に参加し、派遣労働者の声を聞き続けてきた。

国会に声を届ける

石橋議員は、「派遣かふぇ」で聞いた派遣労働者の声を国会に届けてきた。

2019年11月の厚生労働委員会では、2015年の労働者派遣法の改正に盛り込まれた雇用安定措置が、機能していない実態を指摘。「派遣かふぇ」の名前を挙げ、「現場の声をお伺いすると、いかに厚生労働省が表で言っていることと現場の実態がかい離しているのか、思い知らされるんです」と述べた上で、国として実態を正確に把握すべく、派遣労働者を対象にした調査を行うように要請した。さらには加藤厚労相に「派遣かふぇ」に来て派遣労働者の声を直接聞くよう要請した。

その要請は、翌年実現した。2020年7月、加藤厚労相が議員会館内で開かれた「派遣かふぇ」に出席し、派遣労働者の声を聞いたのだ。

その前月、加藤厚労相は、コロナ禍の影響が拡大する中、派遣労働者の雇用を維持するよう、派遣事業者団体に要請した。ところが、現場では露骨な「派遣切り」が起きていた。石橋議員は2020年8月の厚生労働委員会で、要請が守られていない実態を指摘。「大臣の指示で、もしちゃんとした要請に従っていただかなければ、企業名公表、さらにはさまざまな対応を含めて断固とした対応を取ると、大臣、約束していただけませんか」と迫った。

この質問の約1週間後、厚生労働省は日本人材派遣協会をはじめとする派遣事業者団体・経営者団体などに派遣労働者の雇用維持を再度要請した。

「私たちの声を国会で取り上げてくれたことはかなり感動した」

yuraraさんはこう振り返る。

声が届く場を増やす

石橋議員は、国会に声を届けるだけではなく、yuraraさんたちの声が届くネットワークを広げることにも熱心に取り組んできた。

例えば、厚生労働省の担当課長との意見交換をセッティングしたり、音声SNSアプリ「クラブハウス」で他の国会議員と引き合わせてくれたり、yuraraさんたちが自分たちの声を伝えられる機会を増やしてきた。

「私たちの活動を伝えてくれるだけではなく、声を聞いてもらう場をつくってくれる。そういう場のあることが活動を続ける大きな原動力になっている」とyuraraさんは話す。

「派遣かふぇ」では2021年、ツイッターなどで、派遣労働者の雇用安定措置や同一労働同一賃金、「3年ルール」など11項目のアンケートを行い、その結果を「2021派遣白書」としてまとめた。白書は、石橋議員を通じて厚生労働省に提出された。

石橋議員はこうして派遣労働者の声を国に届けるために奔走している。

ずっと活躍してほしい

派遣労働者は、今も不安定な立場に置かれている。

例えば、派遣労働者が派遣元で無期雇用となっても、派遣先と派遣元との契約が短期間のままでは、派遣先との契約が切れれば、派遣労働者は就労場所を失う。派遣先が見つからない期間は派遣元から休業手当が支払われるが、次の案件が見つからず退職を迫られたり、条件の低い仕事を紹介されて退職を選ばざるを得なかったりするケースも少なくないとyuraraさんは明かす。「派遣元との無期雇用なら安定するという感覚はない。派遣労働者には短期雇用の不安がいつも付きまとっている」と強調する。

「同一労働同一賃金」も思うような成果にはつながっていない。「同一労働同一賃金」によって、派遣会社は賞与や退職金に相当する額を基本給に組み入れる措置を取るようになったが、基準となる額が低すぎるため、時給が変わらないという声が相次いでいるという。

「派遣労働の問題を取り上げる国会議員がもっと増えてくれたら」とyuraraさんは話す。

「派遣のことを一時的に取り上げてくれる議員はいるが、継続的に取り上げてくれる人は少ない。石橋さんのように私たちの声をすくい上げてくれて、改善のために継続して取り組んでくれる議員がいるのはものすごく大きな力になる。これからもずっと活躍してほしい」

派遣労働者は、構造的に弱い立場にならざるを得ず、現状では労働組合の取り組みにも限界がある。だからこそ、政治の役割が重要だ。組織された労働者が、その代表を国会に送り、派遣労働者の処遇改善を求めることの意味は大きい。

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