特集2022.01-02

石橋みちひろは
こんな人
教育分野のICT利活用を推進
議員立法や体制づくり、
予算確保に大きく貢献

2022/01/19
情報労連組織内議員である石橋みちひろ議員は、情報労連という情報通信産業の組合員の代表として、教育分野におけるICT利活用の推進に奮闘してきた。超党派議連での活動は、推進法の成立や国の体制づくり、予算確保(総額約5000億円)に大きく貢献した。取り組みの意義や経過などを石橋議員本人に語ってもらった。
石橋 みちひろ 参議院議員
情報労連組織内議員

1988年 中央大学法学部卒業
1991年 米国・アラバマ大学大学院修了(政治学)
1992年 全電通(現NTT労組)中央本部入職 1994年 国際自由労連アジア太平洋地域事務所出向(在シンガポール)
1996年 NTT労組・政治国際部主任。翌年、国際担当部長
2001年 国際労働機関、国際研修センター勤務(在イタリア)
2006年 国際労働機関・東南アジアおよび太平洋諸島地域担当サブ地域事務所(在フィリピン)労働者活動担当上級専門官
2009年 情報労連中央本部・特別執行委員
2010年 第22回参議院議員選挙(全国比例区)で初当選
2016年 第24回参議院議員選挙(全国比例区)で再選

教育のICT利活用のメリット

教育分野でのICT利活用は、2001年ごろから政府のIT戦略の中に位置づけられてきました。しかし本格的に動き始めたのは、2009年の民主党政権下のことでした。2010年以降、総務省の「フューチャースクール推進事業」や、文部科学省の「学びのイノベーション事業」が、実証事業として初めて立ち上がり、その後、徐々に拡大展開していったのです。

教育分野におけるICT利活用の最大のメリットは、子どもの興味、関心や習熟度などに合わせた、子ども本位の教育が可能になることにあります。

教育とは本来、一人ひとりの子どものニーズに沿って提供されるのが理想だと思います。1クラス40人の教室で、先生が黒板とチョークを使って一斉に教える従来型の教育は、子どもたちの興味や関心、習熟度などが多様化する中で、教育効果の限界が指摘されていました。

ICTはこの20年間で飛躍的に発展しました。ICTを効果的に使えば、個別学習や協働学習を交えたベストミックスの環境で、子ども本位の教育が実践できるようになります。例えば、ある科目が苦手な子どもには、わかりやすい問題を出したり、反復して学んでもらったりすることで苦手の克服につなげる一方、得意な子どもにはもう少し難しい問題を出して理解を深めてもらう。また、協働学習で、自分の考えを友達に説明したり、友達の考えを聞いて取りまとめて発表したり、ICTを活用すればこのように習熟度や興味・関心に合わせた教育を提供することが可能になります。

また、ネットワークを活用して、遠隔学習など場所にとらわれない教育を提供することも可能です。離島や中山間地の子どもたちにも活用してもらえます。

経済協力開発機構(OECD)が行っている学習到達度調査でも、日本のデジタル化教育の遅れは明らかです。子どもたちがICTを利活用して効果的に学ぶことの重要性は高まっています。

超党派で議員立法を成立させる

2010年に「フューチャースクール推進事業」や「学びのイノベーション事業」が始まって以降、実証事業は徐々に拡大しましたが、予算の確保は思うように進みませんでした。

国からの財政措置や独自予算を使って先進的に取り組む自治体も増えましたが、取り組みが進んでいない自治体とのギャップが生まれ、かえって学びの環境に格差が生じてしまいました。

さらに、民主党が2012年の総選挙で野党になってしまいました。そのため私は、超党派の活動で政策実現をめざそうと、自民党や公明党の議員に直談判して、2013年にまず超党派の勉強会を立ち上げました。2015年にはそれを超党派の「教育における情報通信(ICT)の利活用促進をめざす議員連盟」に衣替えし、私が事務局長になりました。会長や幹事長には自民党の議員に就いてもらって、私は実務を取り仕切って走り回ってきました。

そして、その議連の活動を通じて見えてきた現場の課題を解決するために、教育のICT利活用を推進するための基本法をつくることにしました。2016年から下準備を始めて、翌年から本格的な議論を開始。議連の中に立法チームを設け、その事務局長も私が務めました。その結果、2019年6月、通常国会で「学校教育における情報化の推進に関する法律」が見事、成立しました。

その後、政府は「骨太の方針」の中に「GIGAスクール構想」を位置づけ、「1人1台端末環境」や「大容量高速ネットワーク」「教育向けクラウドサービス」の推進を期限を切って達成することを決めたのです。議連の事務局長として走り回った結果、法律ができ、政府の方針の後押しができたことは大きな成果だったと思っています。

GIGAスクールの課題

「骨太の方針」を受けた2020年1月の補正予算では、「GIGAスクール構想」に約2300億円の予算が付きました。それまで毎年10億円程度の予算を得るのにも苦労していたのと比べると、桁が二つも違う大きな展開でした。

その後、新型コロナウイルスが流行し始め、3月に安倍首相が一斉休校を要請すると、子どもたちの学ぶ権利をどう守るのかが大きな課題になりました。在宅授業ができた自治体もありましたが、多くの地域では対応できませんでした。

そこで政府は、当初5年計画だった「GIGAスクール構想」を1年間に大幅に短縮して、1人1台端末環境の整備を急ピッチで進めることを決め、2020年4月の補正予算でさらに2300億円を積み増ししたのです。同時に高速大容量通信基盤等のインフラ整備事業にも約500億円の予算が付きました。

こうして「GIGAスクール構想」が急ピッチで進められることになったのですが、1年以上が経過して、ハード面の整備は進みましたが、自治体によってはまだまだソフト面の対応が進んでいない実態も明らかになってきました。せっかく届いた端末が、まだ活用されていない自治体も少なからずあるようなのです。

GIGAスクール構想の本来の目的は、ICTを活用して、子どもたちの学びを支援することです。そのためには、学校の先生方に、ICTを活用した効果的な授業のやり方についてのスキルやノウハウを身に付けてもらい、効果的に実践してもらう必要があります。2010年以降、教員がICTを利活用した教育を行うためのガイドラインや教員用のデジタル教材、支援ツールなどが蓄積・開発されてきました。現役の先生方に研修を受けていただけるように予算措置を行うなどの環境整備にも力を入れて取り組んでいます。

また、国は、教員や学校を支援するための「GIGAサポーター」「ICT支援員」事業についても予算措置をしていますが、自治体によっては、募集してもなかなか人が集まらないという声も届いています。情報労連の組合員の皆さんやOB/OGの先輩方の中には、子どもたちのためにICT利活用のサポートができる方々が多数いるはずなので、応援してもらえたらうれしいです。

次代の子どもたちのために

ICTは、国民の命を守り、暮らしを支え、雇用を創り、地域の経済を育てるために必要不可欠な存在になっています。政治の責務が、国民の命を守り、暮らしを支えることだとすれば、政治がそのためにICTの利活用を進めるのは当然の使命だと考えています。組合員の皆さんの代表として、ICTの利活用が必要という確信を持って、これからも国会でしっかり活動していきます。

特に教育分野でのICTの利活用は、次代を担う子どもたちに、より良い学びの環境を提供し、個性や自主・自立性を伸ばしてもらうための取り組みです。学校は、地域の拠点でもあり、地域の経済循環のための面的な起点にもなり得ます。これからも組合員の皆さんのお力添えをいただきながら、次代を担う子どもたちのために力を尽くしていきます。

特集 2022.01-02石橋みちひろは
こんな人
トピックス
巻頭言
常見陽平のはたらく道
ビストロパパレシピ
渋谷龍一のドラゴンノート
バックナンバー