特集2022.01-02

石橋みちひろは
こんな人
政府の追及から「対案」の法案づくりまで
労働分野で幅広く活躍する石橋みちひろ議員

2022/01/19
すべての働く人にかかわる労働法に国会議員はどうかかわっているのか。石橋議員は、労働分野のプロフェッショナルとして、労働法制で大きな役割を果たしてきた。法律ができるまでの過程や石橋議員の活躍を聞いた。
村上 陽子 連合副事務局長

労働法ができるまで

日本の法律は、内閣が法案をつくって国会に提出することが多いです。政府は法案づくりに当たって審議会を開き、利害関係者の意見を聞くというプロセスを踏んでいます。雇用や労働にかかわる政府の政策は、労働政策審議会で議論されています。

審議会の中でも『三者構成原則』を取る労働政策審議会は特殊です。三者とは、有識者からなる公益代表委員、経営者からなる使用者代表委員、労働組合からなる労働者代表委員のこと。委員の数は三者同数です。この仕組みによって、労働者の意見がより強く反映される仕組みになっています。三者構成原則は、国際労働機関(ILO)の基本原則でもあります。

労働政策審議会で議論された法案は、公労使のある程度の合意を得た段階で国会に提出されます。とはいえ、労働側が、法案の内容の一部に反対だったり、納得できなかったりする場合もあります。その場合、国会で法案修正や確認などを求める必要があります。国会で修正などを求めるのは国会議員の仕事です。

また、労働側が法案に賛成している場合でも、条文をどう解釈すべきか判断がわかれることがあります。その場合、議員が質問して、政府としての責任を持った回答を引き出してもらうことが重要になります。

さらには、条文の内容だけではなく、法成立後に策定される省令や指針に反映させるためにも、国会での議論が重要になります。

歯止めをかける

委員会を通過させるに当たって付けられる附帯決議も重要です。附帯決議では、法施行後の実態調査や、次の検討課題や見直し時期などを政府に約束させます。次につなげるために大切な取り組みです。「働き方改革関連法案」では参議院厚生労働委員会では47の附帯決議が付けられました。

これらの附帯決議は省令などに反映され、一定の歯止めになっています。例えば、高度プロフェッショナル制度では、「制度を導入する全ての事業場に対して、労働基準監督署は立入調査を行い、法の趣旨に基づき、適用可否をきめ細かく確認し、必要な監督指導を行うこと」という附帯決議が付けられました。高プロ制度を導入すれば、すべての事業所に労基署の立ち入り調査が行われるということなので、労務管理がよっぽどしっかりしていなければ、導入ができません。制度導入の大きな歯止めになりました。

コロナ禍の中では、組織内議員が雇用調整助成金の特例措置や、休業支援金の創設・改善、フリーランスへの保障などを求めたことで、特例措置の拡充や制度の創設につながりました。

このように働く人たちにかかわるルールをつくる際は、国会議員の国会での活動が非常に重要な役割を果たします。組織内議員がいなければ、こうした対応もかないません。

これらは、自民党政権下での話ですが、民主党政権時代には組織内議員が中心になって、労働契約法の改正をはじめとした、労働者のための政策実現が進みました。

石橋議員の活躍

連合は、組織内議員などの国会議員とさまざまな場面で連携しています。法案審議などの段階で連合の考え方を議員に説明し、質問してほしい問題点や明確にしてほしい点などを日常的にやりとりしています。

個人的には、石橋議員が開く個別の勉強会にも参加させてもらってきました。石橋議員は労働組合の担当者や有識者とともに、将来の検討課題などを議論し、最新の動向を常にキャッチしていました。

石橋議員は、国会質問にものすごいエネルギーをかけています。当事者の意見を聞いたり、現場を視察したり、実態に基づいて質問を組み立てています。そのため、石橋議員の質問は、いつもぴしっとしています。労働者派遣法の改正では、改悪を阻止するために何十時間にもわたって質問してくれました。法案は強行採決されてしまいましたが、39項目の附帯決議が付けられ、歯止めになりました。「働き方改革関連法」でも同様に政府を追及し、過去最多の附帯決議が付けられることになりました。

石橋議員は、政府の対応を追及するだけではなく、法律の制定にも大きな役割を果たしてきました。

例えば、国際労働機関(ILO)の中核8条約のうち未批准となっていた105号条約の批准に向けた改正法案では、「ILO活動推進議員連盟」の事務局長として議員立法を取りまとめ、法案を成立に導きました。

また、2018年4月には、石橋議員が筆頭発議者となって「パワハラ規制法案」(労働安全衛生法の改正法案)を国会に提出しました。この法案は、議員立法にもかかわらず、法案審議が行われました。こうした活動が、政府としてパワハラ対策に取り組む必要があるという認識につながり、2019年5月に成立した「パワハラ防止措置法」につながりました。

働く人のための法律づくりのために、労働分野のプロフェッショナルとして、石橋議員はなくてはならない存在だと思います。

組織内議員だからこそ

労働法制は近年、個別労使関係の法律が増え、罰則で履行確保しようという流れが続いてきました。ただ、果たしてそれだけでいいのかと思うところもあります。より良い職場をつくるためには集団的労使関係の確立が欠かせません。その重要性を知っているのは、労働組合出身の組織内議員ならではです。石橋議員には労働法制や労働組合の重要性をこれからも訴えていってほしいと思います。

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