【第5編】働く・2〜「F型」で考えてみましょうか〜F型は
どこに行った?
メンバーシップ型雇用(MS)から女性が次々にハミ出してF型になっているという話を聞いて、それでは女性活躍にならないよ、という気持ちになったのではないですか。そもそも、「ハミ出し」すらも信じられないかもしれません。
無理もないと思います。多くの人たちはそう考えてこなかったのですから。しかし、その点をしっかり考えて雇用の変化を調べた三山雅子さんの「誰が正社員から排除され、誰が残ったのか」(『女性と労働』大月書店)によると、1987年以後の20年間で、正社員の割合が減少していますが、どの年齢層をとっても女性の減少率の方が大きく、テンポも速いのです。
全体像では、もう高卒の女性は正社員になれなくなっていく姿も示しています。もともと女性の正社員が少なかったのに、さらに起きている現象です。
それでは、誰が正社員に残っているのでしょうか。20年間で増減に変化がないのは、40代、50代の男性正社員で、50代では大卒正社員の割合が増加しています。男性全体の正社員が減少しはじめているのに、です。
三山さんはさらに、非正規雇用の中での女性は、パートとアルバイトの増加率が高いのは当然として、男女で違いがない、と言われがちな派遣労働者も20年間で女性の増加率は男性より高かったことを指摘しています。古い話だと片付けないでください。コロナ禍で女性が直面する苦境につながっています。
要するに、男女の正社員の「奪い合い」が浮き彫りになっていて、F型の存在を感知しながら、いわばMSからF型がはがれていくのを観測しているのです。雇用の奪い合いといえば、中高年VS若者、正社員VS非正規といった図式がわかりやすいので常識になっていますが、それらに、女性という視点を入れると、F型が見えてきます。
そこで、再びあなたに考えてほしいのです。どうしてMSばかりに目がいってしまって、F型に目を向けないのだろうか、と。
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。