トピックス2022.03

東日本大震災から11年震災復興と
政治のつながり
人と人、人と制度を結び付け、
暮らしのための制度をつくる

2022/03/15
2022年3月で東日本大震災から11年を迎える。政治は復興にどのようにかかわってきたのか。国や自治体の議員はどのような役割を果たしたのか。2017年まで仙台市議を務め、その後衆議院議員として活躍する岡本あき子・組織内議員に聞いた。
岡本 あき子 衆議院議員
情報労連組織内議員

被災地の現状

東日本大震災から11年を迎えようとしています。

住宅や道路、集団移転、防波堤のかさ上げなどハード面の整備は着実に進んできました。一方、ソフト面ではこれまでの課題に加えて新たな課題も出てきています。

復興住宅で暮らす人の孤独死は、仮設住宅で孤独死した人の数を上回りました。子どもたちの心のケアも新たな課題が見えています。震災当時、幼かった子どもたちが、時間が経過する中で心的外傷後ストレス障害(PTSD)だと診断されるようになったり、家庭環境や経済環境が変わることで進学を諦めざるを得なかったり──。ソフト面の課題は、震災から11年が経過しようとする今でも依然として数多く残されています。それが震災から11年を迎えようとする被災地の今の姿です。

しかし、震災から10年が過ぎたことで、今年4月から福島県を除き、復興予算が大きく減額されます。

ソフト面のサポートはこれまで、社会福祉協議会やNPOなどに頼ってきました。そうした支援団体が、自力で資金を獲得してこれまでと同じように活動を継続できるかというと非常に困難です。見守りやコミュニティーづくりの活動が弱くなってしまうことを懸念しています。ケアを「自己責任」にしないためにも財政措置が引き続き必要だと考えています。

他方、猶予されていた貸付や低利子融資の返済を迫られる個人や中小企業等が増えるという課題も出ています。復興住宅の家賃に関する減免特例も10年間で終了したことで転居をせざるを得ない人たちも出ています。震災から10年以上が経過し、新たな課題と向き合っています。

震災がれきの撤去活動

議員が果たす役割とは

仙台市議会議員として震災復興にかかわる中で、さまざまな声を聞いてきました。

例えば、避難所の運営がどうしても男性中心の視点になってしまう中で、女性や子どもたちなど当事者の声。集団移転などで新しいコミュニティーづくりが求められる中で、それらをサポートする活動をしている人たちの声。孤独死などを起こさないために見守り活動をしている人たちの声──などです。

議員の役割の一つは、人と制度、人と人を結び付けることです。困っている人を行政や支援団体と結び付けたり、支援団体同士を結び付けたりする活動は、議員が最も得意とするところです。

例えば、行政はさまざまな生活支援制度を設けていますが、制度を利用するためには利用者が行政に申請しなければいけません。制度そのものを知らなかったり、申請の仕方がわからなかったりすれば、制度があっても利用できません。そういう場合に、どの制度が使えるのかを伝えたり、申請の仕方をサポートしたりするのも議員の役割です。

また、困りごとがあったときに、それに対応してくれる支援団体につなぐのも議員の得意とする仕事です。

私も住民の皆さんの制度利用をサポートしたり、支援団体につないだりしてきました。

国会・政府に被災地要望活動

制度をつくる役割

議員のもう一つの役割は、制度をつくることです。

震災発生当時は、民主党政権でした。当時、自治体議員が被災者の声を聞き、それが国の政策に反映され、生まれた制度がいくつもありました。例えば、「みなし仮設住宅制度」はその一つです。住宅が津波などによって被害を受けた際、自力で民間の賃貸住宅などに入居した場合に、その住居が仮設住宅としてみなされる制度です。

「造成宅地滑動崩落緊急対策事業」もその一つです。地震の際に地崩れが発生した住宅地に対して、崩落事故防止のための工事を行う事業です。個人では対応しきれない問題について国として対応することにしました。

また、「中小企業等グループ補助金」もそうです。これは、複数の中小企業がグループを構成して計画を策定し、まとめて補助金を申請できる制度です。

これらの制度は利用した人からは「助かった」という声をたくさんいただきました。ただ、その制度が民主党政権下でつくられたということがあまり知られていないのは残念です。

このように議員の仕事は、人と制度を結び付けたり、制度そのものをつくったりするものであり、復興のためにも大切な役割を果たすものだと考えています。政治は復興に大きくかかわっています。

地割れなど宅地被害

今後の課題は?

今後の課題の一つは、風評被害への対応です。特に海産物に対して輸入規制を取る国は、震災から10年以上が経過した今もあります。このように風評被害が元々、続いてきた中で、原発の処理水を海洋放出する話が加わると、さらなる風評被害が懸念されます。政府は、「風評被害が起きないようにする」と言いますが、この状況では「風評被害はある」ことを前提にした対策を講じるべきだと訴えています。

また、冒頭で申し上げたとおり、ソフト面の対策があります。財政措置は引き続き必要だと考えています。

そもそも、これまでの自民党政権は、「自己責任」という考えに基づき、そうしたケアを家族の仕事の延長という発想で捉え、そこへの財政措置を手厚くするという発想が弱かったと言えます。

人をケアする仕事は、日本全国どこでも必要な仕事であり、ケアの仕事をしながら生活ができる人が増えれば、それが地域の活性化にもつながります。

ケアの仕事がおろそかにされた結果、人口が流出し、高齢化が進行するという悪循環に陥っているのが現状です。立憲民主党では、地域においてケアの仕事をしながら生活できる社会をめざしています。今年7月に予定されている参議院議員選挙でも、こうしためざす社会像を有権者の皆さんに訴えていきたいと考えています。

石橋みちひろ議員への期待

その点、石橋みちひろ参議院議員は、社会的に立場の弱い人たちの視点に立ち、ケアの仕事の処遇改善にずっと取り組み続けてきました。それが地方再生や地域の活性化につながります。これからも引き続き国会で仕事をしていただきたいと強く願っています。

新型コロナウイルスの感染状況が収束せず、難しさはありますが、状況が落ち着いたら、東北に足を運んでください。東北のことを思ってくださる皆さんの気持ちが多くの人の支えになると思います。

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