トピックス2022.05

全ベルコ労組 札幌高裁・中央労働委員会で和解ベルコ社と中央労働委員会で和解成立
将来にわたる労使関係の基盤をつくる

2022/05/13
全ベルコ労働組合が不当労働行為の救済を求めていた事件で3月30日、中央労働委員会で和解が成立した。当事者2人の職場復帰とバックペイの支払いを勝ち取った1月の札幌高裁での和解に続き、大きな成果を得る和解となった。これまでの経緯や和解のポイントを棗弁護士に聞いた。
なつめ 一郎 弁護士

中央労働委員会における和解のポイント

  • べルコ本社が労使協議の当事者として将来にわたり、全ベルコ労働組合と組合員の勤務条件について誠実に協議を行うこと
  • 会社が代理店主に対して、代理店主が組合活動を理由に組合員に不利益取り扱いをするよう圧力をかけたり、促したりしないこと
  • 組合員が業務していることを理由に代理店の閉鎖や廃業をするよう圧力をかけたり、示唆したりすることを行わないこと
  • 会社は代理店主に対して労働組合法を順守すべきことの理解を徹底すること

経緯と和解の内容

ベルコ事件の主戦場は、裁判所ではなく、労働委員会でした。

経緯を振り返りましょう。2014年、ベルコの代理店で働く従業員2人が労働組合を結成しようとしました。これに気付いたベルコは、2人が働いていた代理店を、代理店ごと閉鎖し、2人を別の代理店でも採用しないことで事実上、解雇しました。ベルコによるこの行為が、労働組合法に基づく不当労働行為として認定されれば、2人は職場復帰と賃金のバックペイ、職場での組合活動を認められることになります。

ベルコは、従業員数約7000人のうち正社員はわずか35人程度。地域の支社長も含め99.5%の従業員は、「業務委託契約」か「委託先代理店で雇用された労働者」という、「組織丸ごと業務委託」という組織形態の会社です。

ポイントは、裁判所や労働委員会がこうした「組織丸ごと業務委託」の特異性を認識し、ベルコの使用者性を判断できるかどうかでした。

2人の主な仕事は、葬儀の施行と互助会の営業、生命保険の販売の三つでした。このうち葬儀の施行が業務の8〜9割を占めていました。ところが、葬儀施行業務に、2人の雇用主である代理店主は一切関与していませんでした。2人は、葬儀が行われる会館の館長の下で働いていました。実際の指揮命令関係はどこにあるのか。実際の使用者は誰なのか。そうした点が問われました。

その結果、札幌地裁の判決は、契約の形式を重視したため、ベルコとベルコの代理店従業員の関係について、ベルコの労働契約法上の使用者性を認めませんでした。

一方、北海道労働委員会は、ベルコの実質的な組織の一体性を認め、ベルコが不当労働行為の主体であると判断し、2人の職場復帰やバックペイなどを認めました。北海道労働委員会は、ベルコが実質的に一つの組織を形成しているという「実質的組織一体論」という新しい論理を打ち出しました。これは、これまでにない非常に画期的な救済命令でした。

札幌高裁の裁判官もその内容を評価したため、この救済命令を前提とした和解協議を双方に勧めました。中央労働委員会も北海道労働委員会の命令を維持するという判断のもとに二度にわたり和解勧告書を出しました。

その結果、札幌高裁では2人の職場復帰とバックペイの支払いで和解し、中央労働委員会では今後の労使協議のあり方などを確認し和解しました。

将来に向けた和解

労働組合としては、中央労働委員会でも救済命令を出してもらうという判断もありました。しかし、いくつかの理由からそうしませんでした。

一つは、札幌高裁で2人の職場復帰とバックペイの支払いで和解したことです。札幌高裁で和解が成立したため、中央労働委員会で救済命令をもらうとしても、出せる命令の内容が限られてしまうことがありました。

もう一つは、中央労働委員会が判断できる内容です。中央労働委員会が判断できるのは、申し立て時点の使用者性であり、ベルコが申し立て以降に組織構造を見直すなどすると、その使用者性を改めて問い直して、裁判や労働委員会を繰り返す必要が出てしまいます。

そうであれば、将来に向けてベルコと協議関係をつくるほうが労働組合にとって得策であると判断しました。

当初は中央労働委員会もベルコ社を労働組合法上の使用者と位置付けていましたし、労働組合としては、和解勧告の中に「団体交渉」という4文字を入れることにこだわりましたが、会社がそれを拒否して裁判闘争を継続するより、ベルコ社と将来的にも協議ができる体制をつくる、実質的な団体交渉を行う方が良いと判断しました。

中央労働委員会の和解勧告の中には、ベルコ社が労働組合活動を理由に代理店を閉鎖しないこと、不当労働行為には対処することなどが条項として盛り込んであります。2人が職場に復帰し、将来にわたって会社と協議し、組合活動ができる基盤をつくる。これは組合側の実質的な勝利と言える内容で、今後の労使関係の構築に向けても、和解の方がより良い選択肢であると言えます。

社会への影響

中央労働委員会での和解によって、北海道労働委員会の命令は効力を失いますが、北海道労働委員会が示した「実質的組織一体論」は、今後の類似の事案でも大いに活用できます。

「実質的組織一体論」では、業務委託や請負形式を濫用した事案に対し、要素を満たせば、形式的には請負関係であっても、指揮命令関係があるとして使用者として認定することや、労組法上の使用者として団体交渉に応じなければいけないことなどが示されました。組織丸ごと業務委託契約で使用者責任を逃れようとする事業者に歯止めをかける重要な手段になります。

今回の闘いでは、労働組合の力によってバックペイの支払いや職場復帰まで勝ち取れることを示せました。雇用によらない働き方が急激に広がる中で、労働組合だったら闘えることを示せました。

残された課題と展望

一方、労働基準法や労働契約法上の使用者性という観点では課題が残ったのは確かです。

ウーバーイーツのようなプラットフォームビジネスの場合、プラットフォーム事業者と配達員の関係は1対1なので、労働基準法上の使用者性も十分に問えますが、日本の労働基準法上の労働者の幅は狭いので、間口を広げていかないと、今後救われない人が増えてくることは間違いありません。刑事罰のない労働契約関係の法令については、対象をもっと緩やかにしていいのではないかと思います。

長い時間はかかりましたが、今回の和解で代理店従業員がベルコに声を届けられる協議交渉の場ができました。労働組合が頑張った成果です。労働組合の力の大きさをあらためて感じました。今後は、この枠組みを使って仲間を増やし、現場の声を会社に伝えることが大切です。

情報労連の今後の取り組み
良好な労使関係の構築へ
仲間づくりなど支援を継続

柴原 准二 情報労連組織対策局長

冠婚葬祭大手「ベルコ」の代理店で労働組合を立ち上げた従業員2人の実質解雇という不当労働行為の救済を求めていた事件は、札幌高裁での当事者2人の復職をはじめとする和解に続き、中央労働委員会においても和解が成立しました。

今回の和解において、(1)ベルコ社と全ベルコ労働組合の間において、組合員の勤務条件について協議を行うという実質的な団体交渉の枠組みができたこと、(2)ベルコ社が代理店に対して、組合活動に起因する不当労働行為をせしめないこと──などを確認できたことは、約7年半にわたる闘いの大きな成果であることは言うまでもありません。

一方で、現場においては、業績不振を名目にした代理店の閉鎖や雇い止めの実態などが今もなお相次いでいます。今後は、今回の和解を踏まえ、ベルコで働く全国の仲間が働きがいや誇りをもって働き続けることができる職場環境をつくっていかなければなりません。ベルコ社に対しては、今回の和解内容を着実に履行するとともに、労働組合法を順守し、誠実に労働組合との協議に応じること、ならびに良好な労使関係の構築に努めるよう強く求めていきます。

また、集団的労使関係を広げていくためにも、全ベルコ労働組合に集う仲間を増やし、組織を強くしていくことが重要であることから、引き続き、全ベルコ労働組合を全力で支えていくとともに、連合や連合北海道、全ベルコ労働組合の仲間と連帯し、取り組みを強化していきます。

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