【第6編】子ども〜どう育てるつもりですか〜ジェンダー規範
コロナ禍で女性の苦境があらわになりました。しかし、男性たちは、それはジェンダーの問題ではなく個人の努力の問題だ、と考えてしまいがちです。それどころか、ジェンダーという言葉を聞くだけでしかめっ面をして、女性に振り回されたくないよ、といら立つ男性が多いのはなぜでしょうか。何も教わってこなかったからです。そんな「無知」でも困った経験がなく大人に育ったからです。
男性とは比べものになりませんが、女性もちょっとあやしいです。国立社会保障・人口問題研究所『全国家庭動向調査(2018年)』によると、「結婚後は夫は外で働き、妻は主婦業に専念」「3歳くらいまでは女性は働かず育児に専念」「重要なことは父親が決定」「夫は家庭より会社の仕事を優先」「男の子は男の子らしく、女の子は女の子らしく育てる」などの意見への女性の賛意は、わずかとはいえ年々薄れています。けれども、だいたい半数かそれ以上の女性が肯定していますよ。
しかも、60代、70代でジェンダー規範が根強いのはわかるとして、匹敵する賛意が20代にみられます。ジェンダーギャップ指数の最劣悪国では、女性も男性のジェンダー規範に浸っています。20代になった時点でその気満々なのです。「夫も妻も家事や育児を分担すべきだ」への賛意が高いからこそ、見落としがちな事実です。子どもたちは決してジェンダーフリーに育てられてはいません。ということは、子育てのポイントであるのは間違いありません。
母親がそんなジェンダー規範はイヤだと思っていても、それを教えていないか、教えるのを阻むものがあるか、忙しくて教えられないかなどに陥っています。
同調査では、フルタイマー、パートタイマー、自営の順に、女性が旧来のジェンダー規範に賛同する割合が高くなっていきます。働き続けよ、という原則を伝えました。どの働き方もしんどいのですが、母親がジェンダー規範に背を向けてがんばっている姿は、必ず後々効いてきます。
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。