トピックス2022.10

結成60年
結成からの歩みを
振り返る
社会から期待され、
共感される産別運動を追求
運動の「軸」をぶれずに貫き通す

2022/10/13
情報労連は2022年10月8日、前身である「電通共闘」の結成から60年を迎える。結成50年からの10年間は、東日本大震災からの復興・再生、相次ぐ自然災害、コロナ禍への対応、産別機能の強化に向けた組織改革、「ICTS政策」の確立、産別政策の実現、社会的役割の発揮──などに取り組んだ10年間だった。運動の軌跡を振り返る。

格差是正をめざして

情報労連の前身となる電通共闘は1962年10月8日、加盟組合14、オブザーバー5、加盟組合員数約19万人で誕生した。

結成の背景には、全電通(現NTT労組)の「労働運動の発展のためには産別運動の強化が重要であり、電電公社の関連企業労働者の結集を図る」という運動方針があった。当時の電気通信労働者にとって、下請け労働者の組織化や、劣悪な労働条件の改善、格差是正などは大きなテーマだった。

1968年、電通共闘は「統一賃金政策」を策定し、春闘を展開。労働条件の向上や格差是正につなげた。

1977年、電通共闘は「労働組合法上の労働組合」として承認された。これは、電通共闘が電電公社に対置する法律上の団体として認知されたことを意味する画期的な出来事だった。これに伴い電通共闘は、電電公社と「団体交渉方式に関する協定」を締結。関連企業の労働者に関する協議を行う「会議」を設置することになった。

1980年、電通共闘は名称を「電気通信情報産業労働組合連合会」(電通労連)に改称する。これによって、名実ともに産業別労働組合になった。

時代の流れの中で役割発揮

1980年代前半、電通労連は電電公社の民営化という大きな課題に直面した。電通労連は、電電公社に民営化方針に対して、100年間かけてつくり上げてきた「国民の共有財産」を私企業の利潤追求のために切り売りするものだとして反対運動を展開した。

1980年代は労働戦線統一の大きなうねりが起きた時代でもあった。1982年12月には「全日本民間労働組合協議会」(全民労協)が結成されると、電通労連は幹事として加入した。

その後、1989年、ナショナルセンター「連合」が800万人の規模で誕生した。初代会長には、情報通信労連の山岸章委員長が選出された。

新たな運動の創造

1991年に情報通信労連から情報労連に改称。こうした中、情報労連は「複合産別」として、組織機能の強化と組織拡大に傾注するという方針の下、運動を展開する。

その一方、新たな運動の創造にも挑戦した。その一つが2006年に確立した「情報労連21世紀デザイン」だ。この中で情報労連は、「暮らしやすい社会の実現」をめざし、企業内中心の運動から地域社会と協働した運動の展開などを掲げた。こうした理念の下、情報労連は、大学と連携する「明日知恵塾」や環境保護を中心とした「明日Earth」活動をスタートさせた。こうした取り組みを展開する中、情報労連は2012年、結成50年を迎えた。

結成50年からの10年間

情報労連結成50年からの10年間は、東日本大震災からの復興・再生に取り組んだ10年間でもあった。情報労連は震災の発生直後から社会的な使命を果たすための活動を始めた。その範囲は、組合員・家族・退職者の安否確認から春闘への対応、生活相談、カンパ活動、ボランティア活動など多岐にわたった。

また、東日本大震災以降も、2016年の熊本地震、2018年の西日本豪雨、2019年の台風19号災害など、自然災害からの復興・再生に取り組んだ。さらに2019年末からは新型コロナウイルスの感染拡大に対し、医療系加盟組合へのマスクや防護服などの物資支援、休業が生じた加盟組合への財政支援など、加盟組合の支援を展開した。加えて、コロナ禍においても労働組合活動を止めないため、リモートツールを活用した活動を展開した。

福島県南相馬市でのボランティア活動

産別機能強化の10年間

情報労連の歴史は、「組織改革」の歴史と言っても過言ではない。直近の10年間においても、大きく2次にわたる組織改革を実行した。

その根幹は、産別労組として「すべての加盟組合にとって存在感ある産別運動の展開」により、その役割・責任を追求し、将来にわたって情報労連の組織力・運動力を継承・発展していくことである。2019年からは基本組織として9つのブロック支部からなる新体制をスタートさせた。

加盟組合への対応としては、2016年に全ベルコ労組が情報労連に加盟。ベルコの働かせ方が「雇用破壊」につながりかねないという強い危機感のもと、連合とともに闘争を展開し、2022年の和解につなげた。

2019年にはソフトバンク労組が情報労連に加盟。これにより三大キャリアの労働組合が情報労連に加盟し、情報通信産業のリーディングユニオンとしての位置付けを確固たるものにした。

全ベルコ労組が会社側と和解
ソフトバンク労組が情報労連に加盟

産別政策の深化と実践

情報労連の政策は、2006年に策定された「情報労連21世紀デザイン」をベースとしつつ、その内容を「情報労連 基本スタンス」としてとりまとめてきた。

とりわけ第50回定期全国大会(2011・7・21)で確認した「情報労連 情報通信政策」は、後に情報サービス政策と統合され、現在の「ICTS政策」として確立するに至った。また、「ITエンジニアの労働実態調査」などで情報サービス産業の実態把握を行うとともに、「ICTSフォーラム」などでAIをはじめ最新の情報通信産業の動向などについて情報発信を行ってきた。

2018年には、時代の変化を踏まえ、「情報労連21世紀デザイン」の第2版を策定した。「情報労連基本スタンス」は働き方や社会課題の変化等を踏まえ、2年を目途に改定を行った。

春季生活闘争では、2014年からは賃上げの流れが復活し、その流れを継続・定着させ、社会に波及させる取り組みに注力してきた。情報労連は「総合生活改善闘争」を展開し、賃金改善や非正規労働者の処遇改善、労働時間の適正化および勤務間インターバル制度の導入、法改正への対応などに取り組んだ。

社会的役割の発揮

情報労連が60年間貫き通してきた「ぶれない軸」「崩してはならない基軸」は、「恒久平和の実現」「社会の不条理を許さない」「自分たちだけの利益ではなく、すべての人が幸せになれる社会」の追求である。だからこそ、情報労連は平和運動や政治活動、さらには社会貢献活動を推進し、不当な差別に立ち向かってきた。その先にあるのは「信頼され、共感される産別運動」の実現である。

情報労連は、「平和四行動」をはじめとした平和運動や社会貢献活動、政治活動をこの10年間においても積極的に展開してきた。中でも、戦後70年を迎えた2015年には、全国で平和集会を開催。さらには、安倍政権が推し進めた「安保法制」への反対運動を展開した。これからも「創り育てる平和」をキャッチフレーズに、「恒久平和」の実現に向けて運動を継承していく。

オンラインツールを活用した春闘決起集会
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