渋谷龍一のドラゴンノート2023.06

【第6編】子ども〜どう育てるつもりですか〜「暮らし方」を先に

2023/06/12

しんどい話が続きましたが、子どもをどう育てるかの話に戻ります。そう言われても、毎日仕事をしながら生活で精いっぱいでしょう。ルーティンをこなし緊急事態に対処する術を自分の方が教わりたいのに、一方で子どもへ教えろ、だなんて……やっぱりしんどいです。

学校教育ではキャリアを学ばせる要素がどんどん入ってきています。子どもにどういう職業があるのかを教え、働くということに目を向けさせることは大切でしょう。仕事の内容だけでなく働き方への興味も湧きます。

しかし、男性と同様に働く、家庭に比重を置いて働く、専業主婦になって家庭で働く、など女の子にどう働くかを教えるわけではありません。

まだ子どもだからといってジェンダー規範を不問にして、働くことを先に教えてよいものでしょうか。その前に男女が生きる社会や暮らし方に目を向ける必要があります。子どもは見たことから学習します。母親の姿を追うことが多いものです。その際、働き方だけでなく、盲点になっている暮らし方を優先して教えてほしいのです。

ジェンダーバイアスが問われないから、働き方改革ばかりで暮らし方改革の発想が乏しいままです。そのタネを次世代以降にまかないでください。大人になってから、しょうがない、にしないで。暮らし方を避けることなく、むしろそこからの働き方でしょう。

子育て三原則の第1である「働き続けること」を思い出してください(第59話)。子どもに就職させるというのなら、あなたが働く姿だけでなく、あなたがジェンダー規範まみれの日本でどう暮らしているのかを見せる。これが大切です。暮らすことは生きること。これであなたは、日本で子どもたちはどう生きるか、ということを問う地点に立てます。子どもたちに見せる姿の意味を、一体いつからどのように教えるのか、と考え始めるはずです。

渋谷 龍一 (しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。
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