特集2023.11

地域で生かすICT
原動力は現場の力
防災・減災にICTを生かす
ソフト面での対策にICTが不可欠

2023/11/13
自然災害の多い日本にとって防災・減災は重要な課題だ。自治体での防災・減災にICTの利活用を推進する楠目しんいちろう高知市議会議員に聞いた。
楠目 しんいちろう 高知市議会議員・組織内議員

南海トラフへの対応が使命

高知市は、南海トラフ地震の発生時に震度7の揺れと10メートルを超す津波の到来が予測されている。市にとって南海トラフ地震の発生を見据えた防災・減災は、市民の命と暮らしを守るための使命だといえる。

情報労連の組織内議員であり、今年4月の選挙で初当選を果たした高知市議会議員の楠目しんいちろう議員は、公約の柱の一つに防災・減災におけるICTの利活用を掲げている。

「高知市では防潮堤などのハード面の整備は進みつつありますが、防災・減災に絶対ということはありません。ソフト面も並行して整備することで、より高い安全性が確保できます。中でもICTは防災・減災との親和性が高いため、さらなる利活用が必要です」と話す。

楠目議員は、防災・減災のICT利活用に関する課題として次の3点を挙げる。

1点目は、防災アプリの認知度だ。高知県は気象情報や避難情報、災害危険度などを通知する「高知県防災アプリ」を提供している。しかし今年6月時点でのダウンロード数は高知県全体で約5.6万件、高知市では2.4万件だ。「高知市の人口は約30万人。そこからすると認知は十分ではありません。認知度の向上に努めていきたい」と楠目議員は訴える。

2点目は、県外や国外からの観光客向けの情報発信だ。県外や国外から来た人たちが観光時に被災した場合、土地勘がなかったり、言葉がわからなかったりして避難に支障をきたす懸念がある。楠目議員は、「安全に避難するための手段を用意することが大切」と話す。そのため宿泊施設などでの防災情報の提供などを求めている。

3点目が、整備したインフラのさらなる利活用だ。「ハード面では高知県総合防災情報システムが改修され、国・県・市がそれぞれ保有する情報をシステム上で共有できるようになりました。この基盤を活用してさらなる安全を確保することが大切です」と訴える。

避難支援アプリの導入促進

こうした課題認識に基づき楠目議員は、防災・減災におけるICT利活用促進を展開している。

その一つは、VRやARを活用した災害の疑似体験の推進だ。「VRやARのアプリを使って災害を疑似体験してもらうことで防災意識の向上につながります。アプリの開発を促進していきたい」と話す。また、安全な避難経路がリアルタイムで把握できる機能を防災アプリに搭載することも市議会の中で発言してきた。

同時にマイナンバーカードを活用した避難支援アプリの導入も求めている。これは国が主導して自治体での導入を促進しているもので、災害時の避難所の受け付けなどにマイナンバーカードを使うシステムだ。「このシステムを使うと、避難者の情報をスムーズに把握でき、受け付けや入退所が簡単になりスタッフの稼働軽減につながります。それだけではなく避難者の負担軽減や必要な支援策の正確な把握にもつながります。高知市での導入を求めていきたい」と訴える。さらに高齢や障害で単独での避難が難しい人への対応でも、ICTの利活用を促進したいと考えている。

防災・減災は全国各地の自治体も抱える課題であり、自治体間の連携も重要になる。

楠目議員は、「情報労連の自治体議員団の皆さんは、情報通信にかかわりの深い人ばかりです。ICTの利活用の方法などについて議員団の皆さんと連携を図りながら、より良い街づくりに貢献していきたい」と意気込む。

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