特集2023.11

地域で生かすICT
原動力は現場の力
Well-beingの向上へ
地方自治体への具体的な政策提言につなげる

2023/11/13
情報労連は2023年5月、地域課題に重点を置いて地方自治体への具体的な政策提言につなげる観点から「地域ICTS政策」を策定した。概要を解説する。
柴原 准二 情報労連政策局長

基本スタンスと地域ICTS政策

情報労連は、産業別労働組合としての統一的な考え方および政策提言を組織内外に発信することを目的に、労働政策や産業政策だけではなく、社会保障、平和、人権、経済、税制、環境、エネルギー等、幅広い分野を網羅した政策集「基本スタンス」を策定し、特に、デジタル化の進展を支える産業に対置する産別労組として、ICTを個人や社会の“well-being”(幸福・安寧・福祉)の向上に役立て、すべての人々にとって「暮らしやすい社会」の実現につなげる観点から、ICTS政策(※)を基本スタンスの中心的政策として、その実現に向けた取り組みを進めています。

本年5月に策定した地域ICTS政策(別掲)は、基本スタンスに掲げたICTS政策の考え方をベースに、人口減少・少子高齢化による経済の縮小、就業機会・働く場所の減少による都市部への人口流出、行政サービスや社会インフラの機能低下、教育環境の格差、災害発生時の危険性の増大──などの地域課題に重点を置いて地方自治体への具体的な政策提言につなげる観点から、各地域の組合役員からの意見を踏まえ、「教育」「デジタルデバイドの解消」「防災・減災」という三つのテーマに絞って具体的政策として取りまとめたものです。

【情報労連「ICTS政策」の基本的な考え方】

1.「情報労連21世紀デザイン」の「情報福祉政策」に基づく「暮らしやすい社会」の実現に向け、あらゆる分野でのICTS、IoT/ビッグデータ・AIの利活用によるデジタル化を促進する。

2.重要な「ライフライン」かつ社会・経済を支える基盤であるICTSインフラの安定した提供とさらなる整備・強化を図る。

3.ICTS人材の育成・確保を推進するとともに、利用者のICTSリテラシー向上による安心・安全なIoT/ビッグデータ・AI時代を構築する。

4.情報通信・情報サービス産業の健全な発展に向けたさらなる環境整備とICTS政策の推進体制を強化する。

※ICTS政策とは、情報通信(ICT)と情報サービス(S)を一体のものと捉えた政策として提唱したもの。(ICTS=Information and Communication Technology + Information Service)

(別掲)情報労連「地域ICTS政策」

【教育】

1.情報通信技術支援員(以下、ICT支援員)の確保に向けた取り組み

ICT支援員は、学校におけるICT関連業務を実現するために必要な専門員で、ICT機器を利用した学習をスムーズに行なうためのサポートや、ICT環境の運用管理を行なう役割を担っている。また、学校や地域で格差が生じないように、同じ条件・同じ学習を受けられるよう4校に1人の配置基準が定められているが、地域によっては配置状況に差が生じていることから、配置基準を満たすよう予算の確保および民間企業と連携した人材の確保・育成等の充実を求める。

2.デジタル・シティズンシップ教育(以下、DC教育)の全世代への展開

デジタル・シティズンシップとは、「デジタル技術の利用を通じて、社会に積極的に関与し、参加する能力」のことである。SNSを使った詐欺やフェイクニュースが広がる中で、責任ある行動をとるために必要な能力として、子供たちへのDC教育を取り入れる動きが政府でも進んでいるが、それら能力は子供だけではなく、むしろ大人も含めた全世代に必要とされている。自治体には、DC教育の取り組みの必要性を周知するとともに、全世代が情報を適切に評価し、社会活動に活用する能力を身につける取り組みの充実を図ることを求める。

【デジタルデバイドの解消】

1.デジタルインフラの整備

デジタルインフラの整備には、政府が光ファイバや5Gの人口カバー率のさらなる向上を掲げているが、敷設費や維持管理費等の財政的な負担が課題となっている。ブロードバンドの整備は、国費を含めた補助事業で進められているものの、未整備地域の解消には、さらなる支援制度の拡充が求められていることから、自治体に対し、住民のニーズを踏まえたインフラ整備の予算化を求める。

2.経済的事情等によるデジタルデバイドの是正

デジタル社会の実現に向けては、経済的な状況を理由とした機会の格差を解消する必要がある。とくに、教育分野では学校のICT環境整備は進められているものの、生活困窮者等に対する自宅等のインフラ整備は、十分な支援が行なわれていない地域もあることから、通信環境の構築が困難な世帯に対する支援の充実を図るなど、インフラ整備を含めた教育の無償化を求める。

3.デジタル推進委員の展開

デジタル推進委員は、国や地方公共団体等がデジタル機器・サービスに不慣れな方等に対して活用を推進する事業等の中で、利用サポートを行なう人のことである。デジタル推進委員は、事業を委託された企業や団体、地域コミュニティの活性化を図る取り組みを行なう団体等に所属する人が主に担っており、携帯電話事業者や携帯販売代理店も取り組みに協力している。デジタル推進委員の取り組みは無給となっているが、講習会等における日当等の支払いは妨げないとされており、デジタル活用を支援する事業およびそれを支えるデジタル推進委員の拡大を図るための計画的な予算確保を求める。

【防災・減災】

近年は、局地的な豪雨や台風、地震など、甚大な被害をもたらす自然災害が相次ぎ発生している。災害発生時に個々人がどのような対応を取るべきなのかを判断するには情報収集が必要となるが、高齢者や移動が難しい人、山間部や河川近隣に住む人、日本語が分からない人など、個々人の状況により多様な内容や伝達手段が必要となっている。とくに、コロナ禍で停滞していた人の移動が再開し、旅行者や出張者等の往来が復活する中、来訪者も含めた災害対策が求められている。政府はLアラートを介して提供される災害関連情報を拡張・地図化し、地域住民以外への情報伝達を行なう仕組み等を整備しているが、地方自治体においても、観光案内所や道の駅等を活用し、外国人を含むあらゆる来訪者に対する防災情報発信の仕組みの整備を求める。

政策の理解促進と実現に向けて

デジタル技術の高度化とサービスの多様化に伴い、社会・経済生活のさまざまな分野においてICTSの利活用が浸透しています。少子高齢化、気候変動、災害の多発、パンデミックなどに伴う社会的・経済的課題に対応し、社会生活の維持や地域の活性化、持続的な経済成長を達成していくためには、ICTSの社会実装によるイノベーションや社会全体のデジタル化を推し進めていくことが必要不可欠となっています。特に、健康・医療や環境・エネルギー、防災・減災、教育等の分野においては、将来にわたって安心して暮らしていくための基盤整備の観点から、いっそうのICTSの利活用の推進が求められます。

産業の活性化による雇用創出と多様な人々にとって「暮らしやすい社会」をICTSの利活用を通じて実現していくためにも、情報通信・情報サービス産業に対置する産別労組として政策実現に向けた役割を発揮していく必要があります。

今回策定した「地域ICTS政策」の実現に向けては、取り組みの意義や目的、政策内容についての理解促進を図る必要があることから、情報労連として自治体議員等を対象とした学習会を開催するなど、組織内議員や関連する団体などと連携した取り組みを展開していきます。また、自治体議員等と連携し、地方自治体における地域ICTS政策に関する対応状況や課題などについて把握し、政策内容の充実・強化を図っていきます。

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