特集2024.04

歴史と運動から学ぶ
労働組合はなぜ必要なのか
中小企業にとっての労働組合とは?
「労組がなければ労基法も絵に描いた餅」

2024/04/10
中小企業における労働組合の組織率は低い中で、労働組合はどのような存在意義を持つのだろうか。外部からのサポートも欠かせない。中小の現場で活動するDe-self労組の中野委員長に聞いた。
中野 匡 情報労連De-self労組
中央執行委員長
情報労連中央執行委員

集団で話し合う意義

中小企業では労働基準法すら守られていない会社がたくさんあります。働き方改革関連法も、ハラスメント防止措置法も、法律を守らせる主体がなければ絵に描いた餅に過ぎません。法律を守らせるためにも中小企業に労働組合が必要です。

確かに、不払い残業のような明らかな法律違反であれば、個人の出来事であっても労働基準監督署が対応してくれるかもしれません。しかし、ハラスメントや人事評価、その他の制度に関することなど、現実には労働基準監督署では解決できないことばかりです。こうした課題は個人で訴えても会社は取り合ってくれません。これらの問題は集団の問題だからです。集団による話し合いは、集団で解決するほかありません。

個人で会社に掛け合えばいいと考える人もいるかもしれません。しかし、中小企業では取り合ってもらえないのが普通です。労働組合として集団で訴えることでようやく話し合いのテーブルに着くことができます。

例えば、De-self労組の加盟組合では今年の春闘で、「車両事故での罰金制度廃止」「休日の電話・メールに対応しなかったことの不利益評価禁止」「社割の割引率アップ」「『代行』役職の廃止」「業務用靴の購入補助」などの項目を要求しました。こうしたことも労働組合が要求しなければ、経営者は自社で起きている問題に気付かないことが多いのです。

「窓の外」の中小企業

とはいえ、現実には中小企業のほとんどには労働組合がありません。この現状を放置したままでは労働組合の存在感が問われる事態になると危惧しています。つまり、かつて「連合評価委員会報告」が指摘したように、大企業の労働組合が現状維持に必死になり、中小企業で起きている問題は「自分の家の窓の外」、自分の「家の中」は暖かいから、「窓の外」にさえ出なければよいという感覚になってしまえば、労働組合の言うことを誰も聞かなくなるということです。大企業を中心とした今の労働組合が、その外側に労働組合をつくる努力をしなければ、労働組合の存在意義はなくなってしまうと思います。

ニーズに合わせた組織化を

中小企業での労働組合運営の難しさは、組合活動に時間と労力を割ける専従者がいないことです。そのため外部から専門的にサポートする人材が必ず必要です。産業別などの上部団体が単組の活動の活性化に積極的にかかわる必要があります。

中小企業の労働組合では、メンバーが固定化して運動がルーティン化してしまうことがあります。新陳代謝のない組織はどうしても停滞していきます。この点でも外部のサポートが大切です。

中小企業の形態は多種多様です。そのため労働組合の形もそれに合わせて柔軟に組織する必要があります。形式にとらわれず労働組合をつくりたいというニーズがあれば、それに合わせて組織をつくらなければいけません。

中小企業に限らず、今ある組織の内側のことだけを考えていると組織は必ず衰退していきます。「窓の外」に目を向け、労働組合をつくる努力をする必要があります。

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