渋谷龍一のドラゴンノート2024.05

【第7編】労働組合〜ジェンダーギャップ最劣悪国でどうしますか〜マイノリティーって言うな!

2024/05/14

クミジョはマイノリティーだと指摘すると、クミダンから「マイノリティーなんて言ってほしくない」と即答されます。どうしてなのか。クミジョを考えるヒントになる大切なポイントです。クミジョを増やす計画は明瞭、増えない理由は不明瞭です。なぜ増えないのか?

「男女差を強調するな」「彼女たちもがんばってるんだから」「マイノリティーって決めつけるな」ってことだそうです。

もう男性も女性もない? こんな心地よい言葉はほかにないでしょう。何せこれ以上何も考えなくてよくなるし、加害者も被害者も消える。これからのことを語る体で、これまでの責任はチャラにできます。ずいぶん高い所にいて、そんなの見たくない、言いたくない、言ってほしくない何かがある人にとって、とても便利な言葉です。

そんなクミダンは、クミジョを増やしたくないのでしょう。女性の登用は時期尚早だ、人材が育っていない、でおしまいです。クミジョの立場になって、なぜクミジョになれないのか、いや、なりたくないのか。あるいは、クミダンにはなぜクミジョを増やす能力がないのか、に踏み込むことはありません。

クミジョががんばっている? そりゃがんばっていますよ。でも高みからそれを言われると、まるで、早く男性みたいにできるようになれ、労組になじめ、いい加減に察しろよ、って言われているようです。

ついでに言っておくと、「ガンバロウ三唱」は、クミジョからめっちゃ不評ですよ。労組の大事なお作法なのにどうして不人気なのか、わかります? クミジョに問いただしても絶対に言わないでしょう。

もう一度読み返してもわからないですか。面倒くさいことに巻き込まれず、聞きたくもないことを聞かなくて済む、すべてを癒やせる便利な言葉だからです。

どう見てもマイノリティーなのに、マイノリティーって言うな!って言っちゃうクミダンは、いったい、誰のために何の宣言をしているのでしょうか。

渋谷 龍一 (しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。
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