特集2017.07

「悪質クレーム」と向き合うサービスする側と、受ける側がともに尊重される社会に

2017/07/21
食品・流通、医療・福祉分野など約165万人の組合員がいるUAゼンセンは、2016年から悪質クレーム対策に取り組んでいる。流通部門を中心とした取り組みを聞いた。

悪質クレームは増加傾向

「スーパーのレジでは毎日のように暴言があります。ひどい場合はお金を投げつけて『拾え』と命令してくる人もいます。繰り返し使った商品の不当な返品や、気に入らない従業員をクビにしろという理不尽な発言もあります。以前に比べると『普通の人』からのクレームが増えたという印象です。ストレスのはけ口として従業員に当たるようなところがあると感じています」

こう話すのは、UAゼンセン流通部門社会政策部長の安藤賢太さんだ。安藤さんは「悪質クレームの件数は体感的には増えています。近年ではSNSなどを用いたクレームも多くなってきました」と現場の実情を解説する。

悪質クレームの背景には、流通・サービス産業の加熱するサービス競争がある。「企業のサービス競争が悪質クレームを助長してきた面もあった」とした上で安藤さんは、「こうした風潮を見直す時期にあると思います。付加価値をきちんと評価してもらうとか、不当な要求は受け入れないということを示していくべきだと考えています」と訴える。

ガイドラインを策定中

UAゼンセンは、流通部門が中心となって昨年から「悪質クレーム対策」を進めている。まず、意識啓発用のビラを作成し、「サービスする側、受ける側がともに尊重される社会をめざす」ことを訴えた。この中では、「自分たちがクレーマーになっているかも」という呼び掛けも付け加えた。安藤さんは、「自分たちも同じことをやっていないよねということを呼び掛けたかった」と説明する。

また、「悪質クレーム」の定義や対処法をまとめたガイドラインの策定も、顧問弁護士などと連携しながら進めている。ガイドラインを策定することで、企業の枠を超えた社会的なルールを形成し、企業が自発的・積極的に対応しやすくすることが狙いだ。

現在検討している案では、悪質クレームを「要求内容または要求態度が社会通念に照らして著しく不相当であるクレーム」と定義し、要求内容や要求態度ごとに類型化している。要求内容には、金品要求や謝罪としての土下座、従業員の解雇要求─などがあり、要求態度には、長時間拘束やリピート、暴力、威嚇・脅迫─などがある。こうした類型に基づいた対応策を検討している。

ほかにも、UAゼンセンでは、大会での機関決議や署名活動を展開したり、業界団体や他産別との意見交換をしたりなどの活動を展開している。今年は組合員を対象にアンケート調査を実施し、今夏をめどに結果をまとめる予定だ。

現場からは賛同の声

安藤さんは、「私たちが訴えたいのは、サービスする側も、受ける側も、ともに尊重される社会をつくろうということです」と訴える。この問題に取り組み始めた当初、「クレームは意見だからガイドラインは必要ない」という意見もあった。だが、施策を現場の組合員に訴えると賛同する声が多く寄せられた。安藤さんは「悪質クレームに毅然と対応するからといってサービスの質が落ちるわけではありません。経営者からは発信しづらい問題ですが、私たち労働組合は労働者の代表ですから、しっかり訴えていきます。この時流を逃してはいけないと感じています」と話す。UAゼンセンではガイドライン策定や世論喚起など、今後も悪質クレーム対策を進めていく。

特集 2017.07「悪質クレーム」と向き合う
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