特集2017.07

「悪質クレーム」と向き合う「店員にも敬意を払おう」イギリス店舗流通関連労組がキャンペーン

2017/07/21
イギリスでは、店員に対する暴力や脅しが社会問題化し、店舗流通関連労組が2002年から「恐怖のない職場づくりキャンペーン」を展開している。企業や行政と連携した取り組みを紹介する。
小川 陽子 UNI Apro東京事務所長

2002年からスタート

英国のUNI加盟組合Usdaw(店舗流通関連労組)は、2002年に「Freedom From Fear Campaign(恐怖のない職場づくりキャンペーン)」を始めた。今でも毎年11月、「Respect Week(敬意を払う一週間)」を続けている。店舗で働く従業員や組合員に対する暴力や脅しが増え続けていたため、この問題を、使用者、政府、一般市民を巻き込んで解決しようとしたのだ。

この取り組みでは労働組合が、店内にキャンペーンポスターを掲示したり、嘆願書に署名を集めたり、ハガキによる啓発活動をしたり、議員の職場視察を受けるなどの活動を展開。多くの組合員がキャンペーンに積極的に参加した。顧客に「店員にも敬意を払おう」と呼び掛けると同時に、従業員や組合員に、「客から嫌がらせを受けるのがあなたの仕事ではない」「あなたの日々の仕事の中で客からの容認できない行為を放置してはならない」という強いメッセージを伝えるのが重要な目的だった。店員は、客からの暴言や暴力に耐えなければならない、解決策もないと思い込んでいたからだ。

企業や行政と協働

Usdawが協約を結んでいる多くの大手小売企業が「店員に対する敬意の憲章」に賛同・署名した。コープやセインズベリー、テスコなどは店内に啓発スローガンの看板を掲示した。モリソンズは職場で暴力に対応するためのスタッフ向けガイドを作成した。Usdawはコープや英国小売業協会と共同で、店舗マネジャー向けの訓練ビデオを作った。

内務省は全国小売犯罪撲滅戦略グループを設置し、Usdawも参加している。コミュニティーの警察、地方自治体、小売企業との連携を強化し、犯罪および暴力撲滅の取り組みを進めている。これらの政策には組合からの意見や、キャンペーンの主な目的が反映された。さらに新聞やラジオ局を通じて、買い物客である一般市民にこの問題に対する認識を持たせるよう、キャンペーンの記事を掲載・発信し続けた。

泣き寝入りしないために

組合員には客から嫌がらせを受けた時の対策として、(1)できるだけ冷静に(2)自分だけで解決しようとしない(上司/管理者を呼び対応してもらう)(3)上司/管理者は、店員へ、暴言・暴力は容認できないこと、繰り返されるなら店への出入りを禁じるかサービス提供を拒否することなどを毅然と伝える(4)Usdaw役員に、起こったことや、上司/管理者の対応について知らせる─などのアドバイスを行う。そして会社は防止または削減のための措置をとる義務があるのだから、泣き寝入りせずに会社と組合に報告するよう奨励する。しかし、もし使用者が店員を守る努力を怠ったなら、とにかく組合に相談するよう呼び掛けてきた。

それでもいまだに、毎日6000人近いコンビニ従業員がタバコや酒の購入者に年齢を尋ねた際に暴言・暴力を受けており、毎日250件以上の人種差別に関する暴力が発生しているとのショッキングな統計がある。Usdawのハネット書記長は、「より安全な職場を作るため、組合員教育および一般市民への啓発を使用者・自治体と連携して推進していく」と語った。

キャンペーンのポスター
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