【第2編】働く〜もう「非正規社会」だって わかっていますか〜隠れていたヒント
「第10話」で夫婦の家事と育児の分担のバランスの悪さを指摘しました。そこに労働の視点を持ち込むと、もっとリアルな姿が見えてきます。
日本の女性のライフコースの主流になりつつある主婦パートは、職場では正社員と同様の仕事を任される戦力である場合が多く、お気楽どころか過酷な働き方になってきています。しかも、家庭に戻ってからも苦しいのです。
国立社会保障・人口問題研究所『全国家庭動向調査』によると、妻の平日の家事時間は、正社員が183分、主婦パートが270分、専業主婦が359分です。妻が正社員だと夫の分担が増え、専業主婦だと夫の分担が減り、主婦パートはその中間になると想像できます。
しかし、現実には違うのです。例えば、妻が正社員でも、100%妻が家事を担当している割合は13.7%でまったく家事をしない夫がいます。妻が100%家事を担当する割合は、専業主婦では23.0%と2倍近くになりますが、主婦パートも21.0%と専業主婦とほとんど変わりません。妻が90%〜99%家事担当の割合も、正社員が30%であるのに対して、専業主婦が50%と高いものの、主婦パートも45.9%と極めて接近しています。
つまり、企業で働き、家庭での負担がのしかかる主婦パートは二重に過酷です。その結果、夫の家事に対する妻の評価は、主婦パートが一番低い。夫の家事に対して「不満」と回答した妻は、正社員が42.3%、専業主婦が42.8%でほぼ同じなのに対して、主婦パートは53.8%と高いのです。
育児の実態と夫への不満も根幹は家事負担と変わりません。なぜ主婦パートの夫に対する評価は最悪なのか。主婦パートが「日本のキホン」の影響を一番大きく受ける立場にいるからです。逆に考えれば、夫は妻が正社員ならば家事や育児を「ある程度」は担うのです。一瞬ですが「日本のキホン」を解決する糸口が見えます。主婦パートの苦境を持ち出した本当の理由は、このヒントをわかってもらうためだったのです。
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。