渋谷龍一のドラゴンノート2020.10

【第4編】パートナー〜そろそろ「オトコ社会」に気付きましたか〜産後のポチッ

2020/10/14

ワークとライフのバランスどころではないあなたがわが家で経験するのは、ワークとファミリーのコンフリクト(仕事と家族責任の葛藤や対立)そのもので、その一つ目の頂点が出産後です。

NHKの内田明香さんと坪井健人さんが『産後クライシス』(ポプラ新書)で、取材に基づいて出産のダークサイドで露出する夫婦の最大リスクについて書いています。産後に夫婦の愛情が消失するのをそんなに大げさな言い方をしなくても、と思いたい気持ちはわかります。しかし描写は的確ですし、ポイントは愛情の消失だけではなく、その影響の広がりや深さにあります。

その時「心のスイッチ」がポチッと入ってしまうのです(本シリーズ第6話)。女性はその音をはっきりと聞き、男性は聞こうともしない。この局面の衝撃はまさに危機的で、女性の絶望は計り知れないものがあります。

パートナーは会社を辞めずに何も変わっていない。しかしあなたは会社を辞めても辞めなくても激動、激変の毎日です。相手は予定されていたように、普段通りに振る舞い、あなたは予定外、想定外、晴天のへきれきです。大きな衝突や対立が始まります。あなたが爆発する理由は、一手に家族責任を負わされたからではありません。知らぬ間に、取り返しのつかない、後戻りができない場所へ連れて来られたからです。一言でいえば、だまされたからです。

ここまで来たらパートナーはもう取り合ってはくれません。「しょうがない」「普通そうだろう」「俺が稼ぐから」。むしろ、家族のためにと仕事責任の方へまい進します。そういうものだろう、それでもよい、という女性であれば折り合いがつけやすいのです。でもあなたのように、子どもはパートナーと一緒に育てるものだと考えていたのなら、あるいはパートナーが約束を違え、それを認めようとしないことが許せないのなら、自分の意思とは違う自分になれ、と強要されるわけです。出産後は人生の緊急事態が必ず発生します。

渋谷 龍一 (しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
『女性活躍「不可能」社会ニッポン原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)で2016年貧困ジャーナリズム賞を受賞。
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