特集2021.03

社会貢献活動・ボランティアの10年日本の「寄付」はどう変化した?
寄付文化を浸透させるために

2021/03/15
東日本大震災は日本の寄付文化にどう影響したのか。日本の寄付の規模はアメリカと比べ、格段に小さい。寄付文化を広めていくために必要なこととは?
宮下 真美 認定NPO法人日本ファンドレイジング協会
マネージングディレクター

2011年は「寄付元年」

多くのボランティアが活躍したことから、阪神・淡路大震災のあった1995年は「ボランティア元年」と呼ばれています。

2011年の東日本大震災では、被災地に向かう交通網が遮断され、ボランティアに行きたくても行きづらい状況が生じました。ただ、その一方で大きく動いたのが寄付です。私たちがまとめている『寄付白書』によると、成人した日本人の68.6%が東日本大震災に関して寄付を行い、その総額は約5000億円に上りました。私たちはこの年を「寄付元年」と呼んでいます。

2011年の個人による寄付総額は、その前年の総額約5000億円から1兆円に跳ね上がりました。その後、寄付の総額は年間7500億円程度で推移しています。寄付をした人の割合も震災前は30%程度でしたが、その後は40%程度まで上昇しました。寄付の金額も寄付した人の割合も年々上昇傾向にあります。

その背景には、寄付を後押しする仕組みの変化もあります。2011年の税制改正で寄付金額の約半分が控除される仕組みができました。また、東日本大震災以降、クレジットカード決済による寄付が一般的になったといわれています。

クラウドファンディングの登場

2011年3月には、大手クラウドファンディングサービス「Readyfor」がサービスを開始しました。クラウドファンディングは、寄付をしたい人たちのニーズにマッチしています。『寄付白書』でも、寄付先を選ぶ際に上位に挙がるのは、「寄付の使い道が明確かどうか」「活動の目的や趣旨に共感できるか」「寄付がすぐにできるか」といった項目です。クラウドファンディングはこれらの項目に当てはまります。

一方、クラウドファンディングの課題は、一過性の寄付募集で終わらせないことです。寄付をしてくれた人たちが継続的に活動に参加してくれるよう、寄付を募るNPO・市民団体が定期的に報告やコミュニケーションを行う必要があります。

コロナ禍では、ホームレス支援を行う認定NPO法人抱樸(ほうぼく)の行ったクラウドファンディングに1億円を超える寄付が集まりました。「自己責任」の風潮がある中で、ホームレス支援には寄付が集まりづらいとされてきましたが、抱樸のプロジェクトに1億円を超える寄付が集まったことは注目を集めました。コロナがあらゆる人の生活に影響を及ぼす中で、「明日はわが身」という共感力が人々の間で高まった結果かもしれません。コロナ禍の中で、寄付をしたいと考える人が増えたと感じています。

寄付文化を浸透させるために

日本の寄付の規模は小さいのが実情です。日本の名目GDPに占める個人寄付総額の割合は、アメリカの10分の1しかありません(日本0.14%、アメリカ1.44%:『寄付白書』2017年)。金額では日本7756億円、アメリカ30兆6664億円です(同)。

日本社会では教育段階での寄付体験が少ないことがその要因の一つだと考えています。アメリカでは、病院や学校が自分たちの寄付によって運営されているケースが少なくありません。寄付が身近な経験になっていることは、寄付文化の発展に影響していると思います。私たちは、高校生に資金を渡して、寄付先を選んでもらうなどのプロジェクトを展開していますが、そのように寄付という行為に早い段階からかかわることが重要だと考えています。

企業の社会貢献意識も高まりつつあります。投資の世界でもESG投資のように社会的なインパクトを生む投資が重視される傾向にあります。先進国と発展途上国の食の不均衡を是正するプロジェクト「TABLE FOR TWO」を社員が提案して、会社が実際に取り入れたというケースもあります。働く人たちが、企業のお金の使い道を変えることはできます。そこに働く人自らかかわる姿勢が大切だと思います。労働組合にはそのサポートを期待しています。

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