常見陽平のはたらく道2022.04

就労人生をどう「いきぬく」か
休み方・サボり方を考える

2022/04/13
長い就労人生を生き抜くためには、息抜きが必要だ。いい仕事をするためには、休み方、サボり方を知る必要がある。

春だ。新入社員がやってきた。今年の大卒者は大学生活の半分を新型コロナウイルスショックの影響のもと過ごした代である。期待と不安で胸がいっぱいだろう。

と、いかにも新聞の社説が新入社員にささげるような、読まれもしない社交辞令を言うつもりはない。会社員生活をいかに生き抜くか。そのための休み方、サボり方を指南する。働きすぎると疲れるのだ。ちょうど「島耕作」シリーズの相談役編が終わり、社外取締役編がスタートしたが、彼もまた猛烈に働いているようで適度に休み、ときにはサボっている。人生100年時代を生き抜くためにも休み方・サボり方は重要だ。

玩具メーカー・バンダイに勤務していた頃、レジェンドと呼ばれた役員の言葉に次のようなものがあった。「見えないところに金をかけるな」。やや誤解を呼びそうな言葉だが、気付かない部分に金をかけても価格が上がるだけで子どもたちも保護者もうれしくない。転じて、誰も見ていないところで努力をしても、必ずしも評価されない。「誰も見ていないところで努力せよ」は美談だ。やることは否定しない。ただ、やりすぎると疲れるのである。

新入社員時代、「飲み会の次の日こそ、朝早く出社しろ」と説教された。実際に、上司はどんなに泥酔しても、翌日早朝出勤していた。当時は「自分はまだまだだ」と反省したが、その後、サウナで仮眠をとっていたという。

映画館に行く、買い物に行く、営業車や会議室、トイレなどで寝る、営業中に一度帰宅する、パチンコに行く、喫茶店で時間をつぶすなど数々のサボり術を見聞きし、一部は私も実践してきた。ランチにビールを飲む人もいた。中には、サボってプールに行ったところ、上司を発見という修羅場を経験した友人もいる。

サボりとは異なるが、業務時間中に仲間とお茶をしながらワイワイと交流することが習慣化されている企業もある。喫煙ルームも、休憩をしつつ交流をする貴重な場だった。

「サボりなど不謹慎だ」と言う声もあるだろう。わかる。一方、サボっていても休んでいても仕事がまわるということは大きな発見であり、実はビジネスのプロセスの改善にもつながるのではないか。オンライン時代となり、いつでもどこでも誰とでも働く時代となった。気を付けなくては、働きすぎてしまう。余裕を持たなくてはならない。サボりは会社につぶされないための技なのだ。

サボりという不謹慎に聞こえる話に終始してしまったが、いかに休むかという発想も必要だ。同じ部署で最も有給休暇を取得している社員は誰か確認しておきたい。その休み方の技を学ぶのだ。早めに宣言する、普段から信頼を蓄積しておく、海外でのスポーツ観戦など大きなプランを決行する、断固として権利を行使するなど、会社員時代は休み方の名人が多数いた。

息抜きながら生き抜きたい。休み方、サボり方を不謹慎だと片付けずに考えたい。休まなければ仕事の質が下がり、それは顧客にも迷惑をかける。社会を支える通信関連の仕事ならなおさらだ。ぜひ、このコラムを新入社員に読ませてほしい。会社と社会の空気がゆったりしたものになりますように。

常見 陽平 (つねみ ようへい) 千葉商科大学 准教授。働き方評論家。ProFuture株式会社 HR総研 客員研究員。ソーシャルメディアリスク研究所 客員研究員。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)、『「就活」と日本社会』(NHKブックス)、『なぜ、残業はなくならないのか』 (祥伝社)など著書多数。
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