渋谷龍一のドラゴンノート2023.04

【第6編】子ども〜どう育てるつもりですか〜性暴力

2023/04/12

前回取り上げた性教育の話は、性暴力とつながっています。目をそらさないでください。性暴力は特殊な事件ではなく、どこにでもある話です。性暴力の加害者が、職場の上司であることもあれば、祖父や父親や息子の場合だってあり得るのです。

子どもから大人になるまで、まるで無知なので、「オレたち」だけの有害な知識がまかり通っています。すぐ近くに「女のくせに」と言っている男性がいませんか。すでにかなり危ないですよ。

「犬にかまれたと思ってあきらめなさい」。昭和時代のテレビドラマで性被害にあった娘に母親がなぐさめるセリフの定番でした。あり得ない事件だから、人間のことにしないで目をつぶれ、というのです。しかし、どう見ても人間がやっていることです。異常な事件なのは間違いありませんが、加害者はごく自然に犯行に及んでいます。

NHK「クローズアップ現代」の議論ページ「みんなでプラス」では「性暴力を考えよう」が公開されていて、たくさんの体験が語られています。学校教員から、父親から、兄から、同僚から……。ずいぶんマスコミが積極的に取材するようになってきました。しかし、そのマスコミ業界でも性暴力があり、映画界でも、おそらくどこでも。

性被害は、自分に起きていることが何なのかリアルタイムではわからないものです。子どもの時の性暴力の被害者について年を重ねてから気づき、心の傷と向き合うようになります。なかったことにしてきたり、されてきたことにも気づきます。

内閣府が「女性に対する暴力の根絶」と銘打って、情報を提供し更新しています。しかし、被害はなくなりません。成人年齢が引き下がりました。被害が起きた後に「あなたが悪いのではない」「一人で傷つかないでここに相談して」というわけです。

母親になりたいあなたは、それでよいと思いますか。子育てと性教育。どうしますか。

渋谷 龍一 (しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。
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