渋谷龍一のドラゴンノート2023.05

【第6編】子ども〜どう育てるつもりですか〜助産婦を呼べ

2023/05/15

治部れんげさんの『ジェンダーで見るヒットドラマ』を読んで感心しました。ドラマが面白いだけでなく、私たちがどういう社会に生きているのかを教えてくれます。

それならば、シブヤも一つご紹介しましょう。イギリスで放映中の人気ドラマ『コール・ザ・ミッドワイフ ロンドン助産婦物語』です。もちろん、日本でも動画配信サイトで見られます。

1950〜1960年代のロンドンの下町で庶民の出産に立ち会う助産婦たちの姿を描いていますが、彼女たちの目に映るのは、うんざりするくらい、男性の手で建設されている社会であり、女性にとって生きづらい社会です。

大きな話題となったリアルな出産シーンが毎回必ずあります。しかし、見どころは何といっても、妊婦や家族が出産に直面するのに至るまでの秀逸なストーリーです。しかも3人、4人と複数のストーリーが同時に交錯します。めくるめく別々の話が展開されるのに、行き着く先は同じで、女性の逃げ場のない苦しみにつながります。

ようやく避妊が認められても、人工妊娠中絶は禁止のままで違法でした。ある回では、自分の手で体を傷つける中絶が描かれ、それが嫌ならと、中絶を手助けする違法で荒っぽい悪徳業者が登場します。日本のドラマなら、せいぜいパートナーの出産に狼狽する男性を想像するくらいでしょうが、そんなレベルではありません。

望まない妊娠、里子、売買春、感染症、同性愛、女性差別、外国人差別、多産DV、性暴力、性教育の欠如など、日常生活から発せられる女性を巡る強烈なメッセージを毎回受け取ることになります。それは昔のイギリスの話ではなく、現在の日本の話に結び付きます。

助産婦の目を通した男性のずるさやおごり、女性の自責の念や憤りの中に何があるのかがわかれば、あなたはそれを絶対に避けたくなり、次の世代はそうあってはならないと考え込むはずです。子育ての格好の教材になるでしょう。

渋谷 龍一 (しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。
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