職場の労使協議/ワークルール総点検労働委員会の救済命令には強い効力
不当労働行為の仕組みをもっと知ろう
不当労働行為の類型
不当労働行為制度とは、労働組合法7条に規定されている、労働組合の団結権を保障するための制度です。
不当労働行為には具体的に次の三つの類型があります。(1)不利益取り扱い(2)団体交渉拒否(3)支配介入─です。
(1)の不利益取り扱いは、組合員であることなどを理由として、労働者に不利益な取り扱いをする行為です。典型的な例は、労働組合を結成したら解雇されたという事例。配転させられたというのもこれに当たります。
多くの場合、使用者は不利益取り扱いをしても、その解雇などは組合活動が理由ではないと主張してきます。労働組合としては、会社が組合活動を嫌っていた証拠を録音するなどで残しておくことが大切です。
団体交渉拒否への対応
(2)の団体交渉拒否には二つの類型があると言われています。一つは、話し合いのテーブルに着かないという「窓口拒否」。特定のテーマについて話し合いに応じないという場合もこれに当たります。
二つ目は、話し合いのテーブルには着くものの、誠実に交渉しないケース。誠実交渉義務違反と呼ばれます。例えば、賃上げ交渉をしているのに決算書の開示要求を拒否し続けるのは誠実交渉義務違反に当たります。
使用者は労働組合の要求を受け入れない場合でも、その理由を資料を示すなどして具体的に説明しなければいけません。その際、労働組合は要求項目との関係を明らかにし、具体的な情報開示の項目を示すことが重要です。「自分たちの要求に対する会社の回答が正しいかを判断するためにこの情報が必要だ」と訴えれば、正当な要求となります。例えば、項目を空欄にした損益計算書を持って、項目について一つずつ聞いていくのでもよいでしょう。
また、交渉権限のない人物が出てきて形式的な回答を繰り返すことも誠実交渉義務違反になります。誠実交渉義務違反に関しては、「カール・ツァイス事件」を参照するとよいでしょう。
支配介入
(3)の支配介入は、脅しを含めて使用者が組合活動に介入してくることです。典型的な例は、社長や役員が「組合ができたら会社がつぶれる」などです。ほかにも「便宜供与の拒否」や「上部団体からの脱退の働き掛け」「組合執行部への人事介入」「複数組合における労働組合の差別的取り扱い」などさまざまなものがあります。
不当労働行為に遭ったら?
不当労働行為に遭った場合、最も有効な手段は労働委員会への救済申し立てです。とはいえ、すべての不当労働行為に申し立てをするわけにもいきません。まずは、会社に対して、判例などを示して不当労働行為を説明することです。
その際には、使用者に対して、労働委員会の救済命令の重大さを周知しておくと効果的です。使用者が、労働委員会の救済命令に違反した場合50万円以下の過料が科せられます。また、労働委員会が使用者に一定の行為を命じたのにこれを行わない場合、命令日の翌日から5日を超える不履行の日数、1日につき10万円以下の過料が科せられます。労働委員会の救済命令に対して行政訴訟を起こしてもなお、確定した命令を使用者が履行しないと、今度は1年以下の禁固もしくは100万円以下の罰金、もしくはその両者が科せられます。このように労働委員会の救済命令には強い効力があります。
さらに、近年では労働委員会の救済命令がインターネットなどで拡散されるようになりましたし、報道されることもあります。企業の社会的信頼度も著しく低下します。
労働組合が言うべきことを言わず、見かけの上では平和に見える状態は健全な労使関係だとは言えません。不当労働行為への対処は労働組合の生命線だと捉え、執行部は強く対応する必要があります。不当労働行為を看過すれば、労働者がモノを言えない職場になると肝に銘じてほしいと思います。