特集2018.08-09

職場の労使協議/ワークルール総点検企業組織再編に労働組合はどう臨む?
自力再編が提案できる強さを

2018/08/10
事業環境が目まぐるしく変化する中で、企業組織再編は多くの労働者にとって避けては通れない課題だ。労働組合はどう対応すべきか。経験豊富なオルガナイザーに聞いた。
狩谷 道生 JAMオルガナイザー
育成推進室 室長

労働組合つぶし

JAMには2000弱の労働組合が加盟しています。1999年の結成から2017年まで395件の企業再編問題がありました。1年間で20件強、企業再編問題が起きている計算です。

企業再編問題には四つの類型があります。「合併」「事業譲渡」「会社分割」「株式売買」の四つです。「合併」の場合は、合併前の会社の権利義務が雇用や労働協約などを含め存続会社などに包括承継されるので問題が起きづらいと言えます。

「会社分割」は部分的包括承継ですが、労働契約承継法などもあり、実態としては包括的承継に近いと言えます。

問題が大きいのが「事業譲渡」です。「事業譲渡」は特定承継なので、譲渡元と譲渡先で合意した特定の権利義務だけが承継されます。そのため、譲渡先が労働協約を引き継がない、雇用を選別するといった問題が生じます。

近年では「株式売買」の問題も目立ちます。関連会社の株式を少しずつ購入し、あるとき大株主として現れ、経営を牛耳って労働組合をつぶし、労働条件を大幅に引き下げる、という事例も出てきています。

このように「事業譲渡」や「株式売買」などにおいて労働組合を敵視してくるのは、もちろん労働条件を引き下げたいからです。労働組合があるとそれができないから、つぶそうとしてきます。「上部団体を脱退しろ」「組合を解散しろ」という事例を嫌というほど経験してきました。実際、上部団体を脱退してしまえば労働条件は間違いなく引き下げられます。

組織再編への対処法

労働組合は組織再編にどう対処すべきでしょうか。対応の原則は、労働組合が組織再編の情報を事前に察知しておくことです。そのためには経営者と日頃から情報交換できる労使関係を築けているかが重要です。

経営上の大きな変更がある場合には、労働組合と事前協議をするという約款を締結しておくこと、これが決定的に重要です。場合によっては労働組合の同意を必要条件にしたり、最低でも通知するようにしたりする取り決めを労使で合わせておくべきです。

次に、実際に組織再編を持ち掛けられたら労使協議の申し入れをします。その際には労働組合側からいくつかの条件を付けます。

一つ目は、組織の保障。労働組合の存続と労働協約、覚書、労使慣行などを包括的に引き継ぐよう求めます。二つ目は、事業体を継続させ、発展させることの確約です。発展の見込みがない「泥船分割・吸収」は認められません。三つ目は、雇用。そして四つ目が労働条件です。

これらの条件が満たされた場合に労働組合は前向きに協議すると会社に申し入れます。受け入れられないようなら、労働組合として組織再編を認めるわけにはいきません。団結して経営者と闘います。

その際には、組織再編を断るだけの力が労働組合にあるかどうかが問われます。現場ではストライキを打つことももちろんあります。街宣活動などを展開し、問題を社会に広く発信することもします。労使紛争を抱えている会社とわかれば、譲受先も嫌がります。効果は大きいです。

組織再編は企業の命運を左右する重大な出来事です。会社が組合を敵対視するような関係ではうまくいくはずがありません。労使の協力・信頼関係が不可欠だと肝に銘じる必要があります。

労組からの再建提案

逆に労働組合が事業譲渡を活用することもあります。私はこれまで15件ほど事業譲渡に対応してきましたが、このうち3件ほどは労働組合から事業譲渡を提案し、4件ほどは会社と組んで事業譲渡を進めました。要するに労働組合から会社再建案を提示し、事業を譲渡させるということです。中小企業では労働組合に力があると、組合員の雇用を守るためにこういうことができます。

そのためには、労働組合が会社と対等な関係を築いていなければなりません。それだけの力を労働組合が付けるためには、日頃から会社の動向をきちんと押さえておくことです。決算書などから自社の経営状況を知っておくこと、労働組合が自分たちの力で会社を立て直せるという考え方と体制を鍛えておくことです。会社に寄り掛かるだけでは、使用者側の思い通りになってしまいます。自分たちで何とかできるという気概を持つことが大切です。

誰が誰に頼むのか

もう1点、大切なのは上部団体の存在です。やはり加盟組合の執行部だけではなんともできない状況があります。上部団体の担当者と相談しながら対応することが大切です。組織再編の動きを察知したらすぐに相談すべきです。

加盟組合の執行部は組織再編のパターンや労働契約承継法などの法律に目を通しておいた方がいいでしょう。自社の経営・財務状況のほか、業界全体の動向をつかんでおくこともポイントです。

企業組織再編問題については、誰が誰に協力してもらうか、その関係を押さえることが重要です。組織再編は、現場で働く組合員の協力が不可欠であり、経営者が従業員に無理を承知でお願いすることがらです。にもかかわらず、経営者が労働者の意向を尊重しないのであれば、それは無礼千万。「誰が誰にモノを頼んでいるのか。それが人にモノを頼む態度か」ということです。雇用や労働条件を守るためには労働組合が、そこまで腹をくくれるかがカギとなるでしょう。

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