特集2018.08-09

職場の労使協議/ワークルール総点検改正職業安定法への対応ポイント
情報の積極的な開示で人材確保へ

2018/08/10
改正職業安定法が今年1月1日から施行されている。労働組合は新しい仲間を迎え入れるためにも企業の求人活動にもっとかかわっていくべきだ。
上西 充子 法政大学教授

改正職業安定法の概要

改正職業安定法が今年1月1日から施行されました。(参考)改正点の一つとして、採用時の条件が、あらかじめ示した条件と異なる場合などに、求人者・募集者がその内容を求職者に書面等で明示することが義務付けられました(職業安定法施行規則4条の2)。これによって企業は、労働者の求人・募集にあたって、最初に示した労働条件を変更した場合、その確定後、可能な限り速やかに変更内容について明示しなければなりません。

求人トラブルは、求人・募集時の条件と労働契約時の条件が異なることで生じるケースが多いです。この規定は、その対策として設けられました。ただし、この規定ができたため、労働条件の変更等にかえってお墨付きが与えられたと受け取られかねない危険があります。

また、求人情報サイトや求人情報誌などへの求人広告の掲載は、ハローワークへの求人申し込みや自社ホームページでの募集等とは異なり、職業安定法5条の3第1項の「労働条件明示」に該当しません。そのため、今回の改正点の対象になっていません。しかし、これでは求人トラブルへの対応ができません。そのため、厚生労働省は法改正に合わせて策定した指針の中で、▼「原則として、求職者等と最初に接触する時点までに」労働条件を明示すること▼変更明示義務については「当該労働契約を締結するかどうか紹介求職者等が考える時間が確保されるよう、可能な限り速やかに」明示すること─を規定しました。加えて、学卒見込み者等については特に配慮が必要であるとして、当初明示条件を変更などすることは「不適切」であるとされました。

さらに、この指針の中では、裁量労働制が適用されている場合はその旨を明示すること、固定残業代制を取る場合はその計算方法等を明示することを、求人サイト等を運営する職業紹介事業者や募集主に求めました。

積極的な情報開示を

労働組合の皆さんにまずお願いしたいのは、自社の求人情報をチェックすることです。自社ホームページでの労働者の募集は、職業安定法5条の3第1項の「労働条件明示」に該当するため、規定に基づいた事項を明示しなければなりません。これらの事項が明示されているかとか、求人情報サイトに掲載されている記載と違いはないかなどを確認してください。

特に、賃金や手当について具体的に明示するよう会社に促してほしいと思います。例えば、指針では固定残業代制を採用する場合は、その内容を記載するよう求めていますが、それが書かれていない場合、固定残業代がないのか、それともそれを隠しているのかが求職者にはわかりません。そのため、「残業代は別途支給」のように明確に記載することがポイントです。

最近の若者たちはブラック企業を強く警戒しています。さまざまな媒体を使って情報を得ようとしていますが、企業が情報を開示してくれないとわからないことも多いです。特に中小企業はそうです。そのため、若者は中小企業を遠ざけてしまっています。情報を開示することは、たとえ現状では胸を張れる内容ではなくても、開示自体が改善に向けた努力をしているという姿勢になりますし、求職者に向けた誠実さにもなります。労働組合から「36協定」の上限時間や離職率の公開などを会社に積極的に提起して人材確保につなげてほしいと思います。産業別の労働組合であれば、産業ごとのフォーマットをつくってもいいと思います。新卒採用の場合は、内定時に労働契約の内容を明示するなどの対応が必要です。

労働市場を健全化するためにも、情報開示している企業に人が集まるようにしなければなりません。そうした観点からも労働組合の積極的な取り組みが求められています。

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