特集2018.08-09

職場の労使協議/ワークルール総点検「みなし労働時間制」のチェックポイントは?
悪用させないために労組のかかわりが不可欠

2018/08/10
坂倉 昇平 裁量労働制ユニオン

裁量労働制 3段階でチェック

裁量労働制に関しては、「手続き」→「対象業務」→「実態」の3段階でチェックするとよいでしょう。

私たちのユニオンには、労使協定がない状態で裁量労働制を適用されている労働者からの相談が多数寄せられます。まず、労使協定の締結・届出のない専門業務型裁量労働制、労使委員会の決議・届出のない企画業務型裁量労働制は無効です。手続きがしっかり取られていない場合、制度の適用が無効となり、未払い賃金を取り戻せる可能性が高いです。

次に、対象業務に該当していない場合です。専門業務型裁量労働制には19の対象業務があります(参照)。このうち2号の「システムエンジニア」には、プログラムの業務は含まれていません。また、4号の「デザイナー」には、「考案されたデザインに基づき、単に図面の作成、製品の制作等の業務を行う者」は含まれません。このように、実際は対象業務ではないのに、形式的に当てはめる事例の相談が多く寄せられています。中には、19業務の対象である業務が社内にあるからという理由で、他の業務の従業員にも裁量労働制を適用している悪質な会社もあります。こうした場合には裁量労働制の適用は無効になります。私たちのユニオンでは、「ゲーム開発者」として専門業務型裁量労働制が適用されていた労働者が、宣伝・イベントの業務に従事させられていた事例で、制度の適用を無効としたことがあります。

ただ、難しいのは、対象業務にどの程度従事していればいいのか、明確な基準がないことです。企画業務型裁量労働制には対象業務に専ら従事するという基準がありますが、専門業務型裁量労働制には大学教授を除いてそうした基準がありません。整備されるべきです。

対象業務に関しては、税理士事務所で働いていた職員が税理士の資格を持っていなかったため、制度の適用を無効とした裁判例があり、厚労省もこの基準を踏襲しています。その点、公認会計士や弁護士、建築士、中小企業診断士などの業務も同じように考えられます。

明確な基準がない実態要件

次のポイントは、働き方の実態に裁量があるかどうかです。上長からの業務指示があるとか、働く時間を指定されているとか、遅刻・早退で賃金が引かれるとか、こうした実態があれば、制度の適用の有効性が争われる論点となります。労働者としては、上長の指示や働いた時間、業務内容などを記録しておいた方が闘いやすくなります。ただし、手続きや対象業務に比べると実態要件では争い方が難しいのが現実です。ここでは、システムエンジニアへの裁量労働制の適用を巡って、実態要件について言及した「エーディーディー事件」が参考になります。

裁量労働制の「みなし時間」と実労働時間のかい離が大きい場合、労働基準監督署が改善指導をすることがありますが、それだけをもって裁量労働制が無効になるわけではありません。判例などを積み重ねて、実態要件を明確化させていくことが大切です。

「手続き」→「対象業務」→「実態」でチェックした際、後者にいくにしたがって無効にするのは難しくなるため、労使における運用が重要になります。

事業場外みなし労働時間制

「みなし労働時間制」には、裁量労働制のほか「事業場外みなし労働時間制」があります。私たちのユニオンでは、自動販売機の補充業務に従事していた労働者の「事業場外みなし労働時間制」を無効にした事例があります。会社から携帯電話を支給され、指揮命令がいつでもできる状態でした。そのため、労働時間が算定できると労基署が判断し、制度が無効となりました。

「阪急トラベルサポート事件」で旅行添乗員への「事業場外みなし労働時間制」の適用が無効になったように、「労働時間を算定し難い」ケースは極めて限られていると考えるべきです。携帯電話などの端末で常時指示できるような場合は争いの可能性が高くなるといっていいでしょう。営業社員への「事業場外みなし労働時間制」の適用などは点検すべきです。

労働組合のかかわりが大事

「みなし労働時間制」は、残業代削減の手法として悪用される可能性が高い制度です。私たちに寄せられる相談でも、社労士が協定をつくって、労働者がその内容を知らないというケースが多く見られます。また、残業代不払いを解消するために、「みなし労働時間制度」を用いて適法化しようとする事例もあります。

「みなし労働時間制」は、手続き後の運用について、労使が継続的に話し合えるかが最も重要なポイントです。労働組合がしっかりしていなければ運用は難しいことを強調しておきたいと思います。

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